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社員のための会社になっているか

昨日号「髀肉の嘆」には久々に10通を超える反響が届いた。その中から経営者1通、お勤め人から1通のメールをご紹介しよう。

1.奮発する精神を見習いたい(秋田県 酒造業経営)

昨日のZ君のように他人と我が身とをくらべて泣けるような社員をもった社長がうらやましい。当社にも営業社員が何名かお  り、社外研修などにもばんたび送り込んでいるものの、Z君のような奮発した魂を返してくれた者はかつていない。さっそく  昨日の号を社内回覧した次第である。「がんばれZ君!」と言いたい。

2.夢を追いかけると生活できない(28才 匿名サラリーマン氏)

私は営業ではなくて業務部として宅急便の集配のような仕事をしています。いつも会うのは事務の年配女性か、誰にも会わず  決まった置き場所から荷物を引き取ってくるだけです。社会人になってから同じような6年をくり返してきました。今の仕事  では、昨日のZ君のように悔しい思いをする機会もありません。研修会などがあっても業務優先なので、参加もままならない  状態です。とても今の状態に危機感を感じています。自分の成長がないのです。しかし転職するにも自分の武器というか、こ  れができると自信をもって言えるものが無く、資格ももっていません。会社の雰囲気は好きで、辞めたくないのですが辞めざ  るをえないと思ってます。社長もいい人でよくご馳走してもらえますが、それでも将来の危機感が消えるわけではないので   す。なぜかというとこのままでは将来が見えてこないからです。一生宅急便屋になってしまいそうだし、膝も悪くしてしまっ  たのです。
(後略)

うむ、ズシリと重い内容のメールを受け取ってしまった。あなたは何とお答えになるだろう。実際に、こういう会社は多いし、こういうサラリーマン氏も多いはず。

・それはひどい会社だ。夢をもてないのなら、さっさと辞めなさいよ。
・同じ仕事を6年もやらせるなんて・・、社長の無能さが目に余る
・膝を悪くしてまで続ける仕事じゃないのでは。
・・・etc.

そんなところが大方の意見ではないだろうか。

だが、あえてこのサラリーマン氏に送るメッセージがあるとすれば、私は厳しいことを申し上げなくてはならない。「会社は悪くない」と。悪いのはあなただ。

会社のことよりもまず先に、あなたが将来ビジョンを持っていることが先決事項だ。それがない状態では、出された料理がうまい・まずいと言っている料理評論家のようなものだ。とても自立的な人生の歩みと将来の成功はありえない。会社と社長に依存しすぎているように私は思う。

また同時にこの実例は、企業経営者にも教訓とすべき何かのメッセージがあるはずだ。
仮にあなたの会社に30才の正社員A君がいるとしよう。A君は、社長であるあなたにとって欠かせない貴重な人材。そのA君とは一生を通して一緒に仕事も個人も歩んでいきたい。
そこで、定期的に次のような基準で検討し、あなたの人事力がうまく機能しているかどうかを調べてみよう。

1.A君は、社外の同世代の平均水準からみて知識や技術面で優秀か。
2.A君に任せている仕事の内容は、社外の同世代からみて上か下か。
3.A君に与えている権限や責任は、社外の同世代からみて上か下か。
4.A君の年収は、社外の同世代からみて上か下か。
5.A君の仕事は、過去において変化・進歩してきたか。
6.A君を、社外の同世代と交流するような研修などの場に出しているか。
7.A君は、会社のビジョンを知っているだけでなく、彼自身の将来ビジョンを持っているか。
8.A君とあなたとは、定期的に将来を語り合っているか。

次世代型経営の一つの要素として、

「会社のために社員があるのではなく、社員のために会社がある。」

ということを知っておこう。

いや、知っておくだけではない。今の組織や人事制度が、「社員のための会社」を実践するものであるかどうかがポイントだ。
会社の理念や価値観を深く理解し、人生をかけて今の会社で成長していきたいとする人材は必ずいる。そうした社員を支援するシステムを作ろう。そうすれば、更に優れた社員が集まってくるようになる。