●「そこに行ってお金を洗うと増える」
そう聞いて女性起業家の渡辺志津江社長(30才、仮名)は、一人で鎌倉の銭洗い弁天まで出かけた。小銭ではなく、お札を洗おうとビニル袋に一万円札を入れて洗った。それをお守りがわりに財布にしまった。
●境内では願掛け絵馬が売っていた。渡辺は絵馬を買って目標金額を入れることにした。
「何の金額を書こうかしら?売上、利益、それとも私の収入?今一番困っているのは収入が不安定なことなので、収入金額を入れよう」と希望収入の金額を書き入れることにした。
「30万円?いや小さい。そんな収入じゃ満足とは言えない」
「50万?まだまだ小さいわ」
「年間1,000万。かなりいいけど、もっと大きな夢をもたなくちゃ」
「一億達成!うんキリがいい。これでいこう」
●彼女は「一億達成!」と書いた。
その札を所定の場所に納め、パチッパチッと柏手を売った。そのときの気持ちを忘れないために絵馬をデジカメにとって手帳に貼った。
●あれから半年たつ。
まったく収入が増えていない。売上げはほぼ横ばいのままだ。
わざわざ手帳に貼った「一億達成!」の画像も見慣れてしまってモティベーション向上にはつながらない。いつしか財布の中のお守りがわりの一万円札も使ってしまった。鎌倉行ったことすら遠い記憶になりつつある。
●ところが偶然なことに、「がんばれ社長!」の武沢さんも銭洗い弁天に行ったと話していた。
「がんばれ社長!」のセミナーのあとの懇親会でのことだ。横須賀の池部さんと行った話を聞かせてくれた。
●渡辺は武沢のちかくまで行って手帳に貼った画像をみせた。
「これが私の願掛けです。銭洗い弁天の絵馬です」
武沢は、「ほぉ、一億達成ですか。いいですね~。これは年商ですか、それとも年収ですか?」
「もちろん個人の年収です」
「すごいですね!何年後ですか?」
「なる早(なるべく早く)です。そんなんじゃいけませんか?」
「いけませんよ、ハッハッハ。バチッと期限を切りましょう」
●そのあと、武沢がまじめな顔をしてこう聞いた。
「渡辺さん、それは短期目標ですか?長期目標ですか?」
「う~ん、中間ぐらいかなぁ」
「じゃあ具体的にお聞きしますが、いまの月収はどの程度ですか?」
「いや~、お恥ずかしいです。いわなきゃなりませんか?」
「だいたいでいいです。ざっくりと」
「不安定なんですが、ざっと20万円ほどです。少ないでしょ、OLの初任給みたいで」
「年間で240万円ということですね。つまり一億円までには40倍にしないといけない。不安定とおっしゃったが自分の給料が取れない日もあるのですね」
「はい。遅配になることがちょくちょく」
●「だったら戦略フォーカスを決めてそっちを願掛けしませんか」と武沢。
「一点突破、全面展開」ということばがあるが、何かひとつのことを達成するとその影響が広範囲に及ぶ、という一点の目標を決めることである。
それはもちろん、短期目標でなければならない。三ヶ月とか半年が期限である。
「戦略フォーカス」とか「戦略的短期目標」などとよぶが、それを決めて、その達成計画を詳細に作り、それについては週単位でチェックを入れる。
それを作るのだ。
<明日につづく>