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人件費は経費にあらず

●社員になりたくても「役員や社員と三親等以内の方はご応募いただけません」と宣言している会社がある。
地方の無名会社ならいざしらず、従業員数3,150名の東証・大証一部上場企業である。

その名は株式会社キーエンス。

同社のホームページ「採用基本情報」にそうした記載があるのだ。
→ http://www.keyence.co.jp/jobs/career/guide/index.html

●たまたま叔父や叔母がキーエンスに勤めていたら、その時点で応募資格を失ってしまう。三親等ということは、親や子、兄弟姉妹、叔父や叔母、甥や姪などであり、「公平・公正な採用活動、人事考課の観点から」そのようにしているという。

●逆からみれば、このようなルールを定めねばならぬほど、身内からの応募が多かったのではないだろうか。社員からみて良い会社の証であろう。

●キーエンスのホームページにはそれ以外にも、次のような驚くべき待遇条件がアップされている。

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<年収>全社員平均 1,285万円(2010年度実績)※平均年齢 33.4歳

[諸手当] 業績、時間外、地域住宅補助、通勤、リフレッシュほか
[賞与] 年4回(3月・6月・9月・12月)

<勤務時間> 8:30~17:15

<休日・休暇> [2011年度]
年間休日127日、G.W.・夏季・冬季各7~10日の連休
週休2日制(土・日/年2回出勤土曜有)
祝日、有給・慶弔・特別休暇

<ゆとりもキーエンス流>
・年3回の長期休暇
G.W.、夏季、年末・年始の年3回の長期休暇はそれぞれ7日~10日程度の連続といったカタチでオンとオフのメリハリを大切にしています。平日は付加価値の高
い仕事に夢中になり、休日は十分にリフレッシュする。そんなメリハリの効いたライフスタイルがキーエンス流です。

・リフレッシュ手当
これは毎年5月のゴールデンウィーク前に新入社員も含めた全社員に10万円を支給するという制度です。しかも家族の分もプラスαされます。これで「G.W.も十
分にリフレッシュしよう。」まさにキーエンス流ゆとりをカタチにした手当です。
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●こんな高待遇を世間に公表できるのは、それを支える業績があるから。また肝心の業績が悪化すれば社員の年収も前年を下回ることがある。上りだけしかないエレベーターは使えないように、社員の給料も情勢に応じて柔軟に変動するように制度が作られているのだ。

●ちなみに、キーエンスの直近の業績は次のとおり。

<平成23年3月期>
売上高  1,848億円
営業利益  866億円 (営業利益率46.9%)
当期純利益 553億円
資本金   306億円
借入金      0
総資産  6,310億円
自己資本 5,925億円 (自己資本比率93.9%)

●創業者は滝崎 武光(たきざき たけみつ)氏で、現在は会長職。

2008年、米経済誌『フォーブス』が発表した日本の富豪ランキングで氏は第九位に入った。その資産は32億ドル(当時の換算で約3,600億円)といわれる。

1974年、29歳の滝崎氏が立ち上げた「リード電機株式会社」が前身で、1986年、Key of Science(キー・オブ・サイエンス)を由来に、商号をキーエンスに変更した。

●「人件費は経費ではなく、付加価値創造の要素である」という考え方は創業時から一貫してきた。
合理主義の精神も徹底し、エレベータで役職者と一般社員が乗り合わせても、出入口に近い者からスッと降りる。普通は役職者や年配者に配慮した乗り降りをするのだが、そうした配慮こそが年功意識を社内に植えつける元になりかねないと虚礼を廃した。

そのあたり、少々古いが『プレジデント』2006年9月号の記事がこちらにある。

→ http://www.president.co.jp/pre/backnumber/2006/20060918/1151/

●同社がなぜこのような高収益体質を実現でき、今なおそれを維持できているのかが気になる。

そのあたり、『プロフィット・ピラミッド』(浪江一公著、ダイヤモンド社)に詳しく書かれている。この本は、キーエンスなど6社の超高収益企業を分析し、14の原則として発表したもの。
機会があれば来週、メルマガで書いてみたいと思っているが、さきに本をお読みになりたい方はこちら。

★『プロフィット・ピラミッド』
→ http://e-comon.co.jp/pv.php?lid=2968