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Apple TVとの出会い

●三年前、私は友人Zのオフィス兼自宅に向かっていた。

アメリカからケース単位で取り寄せたというワインを楽しみながらカードゲームに興じようという週末企画らしい。
食べたいものは各自持参せよ、というのでチーズとパンとシャンパンを持参した。

●相談があるので少し早めに来いという。
場所も不案内だったので思い切り早めに出た。そのせいで一時間ほど早く到着した。案の定、Zはまだ戻っていなかった。

そこで奥様が気を利かせてDVD映画を放映してくれた。
「主人の好みです」
という。

●巨大な液晶テレビ(たぶん60インチぐらい)と、これまた巨大なサウンドスピーカーを大音量にして『トップガン』が始まった。

都内の一等地とはいえ、真ん前は青山墓地だしオフィスビルの最上階をフロア借りしているので、大音量で映画をみても誰も文句が出ないのだろう。

●それにしても英語版の映画で字幕がない。
きっとZがアメリカで買ったものだろう。リモコンのどこを押しても英語しか出ない。さっぱり分からないが、むしろそのおかげでこちらもアメリカ海軍に入隊した気分が味わえた。

●やがてZが戻ってきた。

「武沢さん、お待たせしました。あ、その映画いいでしょ。そうだ、ついでにお見せしたいものがあります」とメゾネットの二階に私を連れて行った。

そこはベッドルームだった。

●「いいの?入っちゃって」
「どうぞどうぞ、適当にベッドに腰かけてください」
「何が始まるの」

Zはそこにある40インチほどの液晶テレビを付けた。画面が浮かび上がってくると、フランスの美人キャスターがニュースを報じていた。

自慢そうに私の顔をみるZ。

私は彼の自慢顔の意味が分からない。「で、それ何?BS放送?」
「これがApple TVですよ」と胸をそらすZ。水戸黄門の印籠を差し出す助さんのようだ。

●こちらはそのご威光がわからない。

「アップルティーヴィー。なにそれ?」

Zはやや落胆気味に「iTunesがテレビで見られるんですよ。僕はこうしてポッドキャストで海外のメディアをチェックし、特に美人キャスターが表情豊かにニュースを報じているのをみては楽しんでいるんですよ。Wi-Fiネットワークで自宅にいながら最新の音楽や映画をダウンロード購入したり、レンタルもできるようになるんですよ、もうすぐ」

●「ふ~ん、外国美人と映画と音楽ね~、ふ~ん」

あまり気乗りしない私。これ以上「Apple TV」を語るのをあきらめたZはすぐに気持ちを立てなおし、「OK。群林堂の大福餅を買ってきてあるのでそれを食べながらミーティングしましょう」と階下へ私を誘った。

●何を隠そう。そのとき、私は十分すぎるほどカルチャーショックを受けており、あれ以来三年間「Apple TVを買う」という願望を持ち続けてきた。

Zには申し訳ないが、そのとき、すごく興味があったのだ。だが、あれ以上自慢話を聞きたくなかったのでそう振る舞ったまでである。

●あれから三年たつがいまだにApple TVとは無縁だった。

だが、先週奇蹟が起きた。
友人Gが誕生日祝いにとその「Apple TV」をプレゼントしてくれたのだ。偶然とはいえ、願いは持ちつづけるものである。

●コンテンツビジネスの次のスタイルを示すものだろう。パソコンソフトは買うものから利用するものに変わった。
ふと気づけば、私の町からレンタルビデオ屋が消えてなくなった。昔、町角ごとにあった群雄割拠のレンタルショップが大手資本の寡占化によって飲み込まれた。「ファミコンショップ」といわれたゲームショップしかりである。

●携帯電話やスマートフォンで必要なアプリや情報を手軽に購入できるようになった。欲しいものが欲しいとき欲しい場所で買える時代。
当然、映画や映像、音楽、音声といったメディアやコンテンツもネットで配信される時代。

●自宅にApple TVがやってきてまだ二日目、自慢するには早すぎるが、大変よくできている。
お気に入りの音楽をバックに、アメリカに行っている長女が一時帰国した昨春、家族で花見や温泉にいったときのデジカメ画像を液晶テレビで見る。

●それに飽きたら、今度は劇場公開中の映画作品の予告編を数十本の中から選んで楽しむ。最後は『ゴッドファーザー』(パート1)を400円でレンタルする。課金はiTunesで登録したクレジットカードで決済される。テレビ番組も今後はオンデマンド化され、広告がない番組は課金され、広告を早送りできないものが無料で見られるなどのことが起こるだろう。

新しいインスピレーションを与えてくれるものであり、家族に買ってかえると、子どもから尊敬されるかもしれない。

家族への誕生日プレゼントの有力候補にいかが。
→ http://www.apple.com/jp/appletv/#undefined