●本来なら今週の「がんばれ社長!」は、読者アンケートの結果発表や当選者の喜びの声などをお伝えして大いに盛り上がっていくはずだった。だが、とてもそんな状況ではない。
●東北をおそった大地震と津波の恐怖は、一生忘れることができないショッキングなものだった。
その後の「計画停電」の混乱。これは前代未聞のことゆえやむを得ない面もあるが、関東一円で混乱を引き起こした。
それにくわえて、コントロール不能状態におちいっている福島原発問題。こちらは憶測が憶測をよんで社会不安をあおってしまっている。
●昨日、私は大阪駅構内で読売新聞の号外を受けとった。
見出しをみてビックリ。
『高濃度放射能を検出 職員一部残し退避』。
私の前でそれを受けとった男子高校生たちは「わ、ちょっと。これやべぇ、大阪に居てええんか?」「九州とかへ逃げようか」などと言い合っていた。
私はその後、大阪市内で仕事があったためテレビもネットもつなげなかったが、内心は気が気じゃなかった。
●それにしてもテレビに登場する原子力発電の専門家の大半がこの期におよんでも「大丈夫」ばかりを連発しているのにはあきれてしまう。
「そんなひどい事にはなり得ない。漏れている放射能だって知れてるし、しかも値は下がり始めている」いう楽観的なことしか言わない。
発電所内に火災が起きていても職員が消火活動できないほど現場はコントロール不能状態。それでも「大丈夫」と言う専門家って、何の専門なのだろうかと疑問に思う。
●とはいえ、原発の方はいくら気をもんでみても私に何かができるわけではない。何があっても良いようにしておくだけである。
それにしても心配なのは、今後の日本経済への影響である。当然、日本の景気減速や財政の縮小は世界経済にも悪影響をあたえる。
●身のまわりにも異変が起きている。
当面のあいだ休刊を発表したメルマガもある。今月いっぱいネット広告の出稿をとりやめた広告主もある。
今月予定していたセミナーやイベントの開催を中止した会社もたくさんある。しかもそれが都内の会社だけではなく、なぜか名古屋や関西でのセミナーも中止になっている。
営業メールを予約配信しておいたのが今日配信され、その内容に抗議が殺到した会社がお詫びに大わらわだ。
●サッカーや野球のプロスポーツ開催にも影響が出ているし、来週開かれる予定の高校野球(甲子園)の開催すら明後日の会議で議論されるという。
●物理的に開催できないイベントならやむを得ないが、興業やビジネスを自粛することが正しい経営判断だとは思わない。今は大人しく自重するのが正しい、という発想も間違っていると思う。
●お花見やバーベキューを自粛するのとは訳がちがう。
国家を支える税収入の元となる経営活動すら自粛してしまっては、それこそ二次災害、三次災害ではないだろうか。そうした負の連鎖を断ち切るのが勇気ある社長の仕事だ。
●経営者として基本はまず、東北と関東に何が起きているのかという事実情報をしっかり集めること。
そして、家族と社員とお客の安全を第一に判断すること。もしそれが脅かされる可能性があるのなら自宅退避もしくは社内退避、あるいは特別休暇をあたえて田舎退避という措置も必要かもしれない。
●次いで業績見通しを作ること。
向こう○○ヶ月の間は売上げが○%減ることを前提に数字計画と資金繰り計画を作ること。少なくとも3パターンほど作っておこう。
幸いにも減収にならなければそれに越したことはないが、売上げにマイナスのダメージがあったとしても資金繰りが破綻しないようにしておこう。資金が万全とは言いきれない場合は、今日からでも資金手当を行って万一の業績悪化に備えよう。
●当面の間はじっと堪えることも肝心だが、さらに大切なことは、営業努力を今まで通りしっかりやることだと思う。
こうした事態だからこそ、節度をもった真摯な営業活動はむしろ爽やかだ。ただし、告知の表現についてはデリケートな時期ゆえに脳天気でやると叩かれる。
●一昨日、兵庫での講演会にて。
ある年輩社長が私に近寄ってきてこう言った。
「武沢さん、今回の地震で日本はもう終わったわ。これからしばらくは倒産続出、間違いない」
周囲には若い経営者もたくさんいたので、私は声を大きくしてこう言った。
「そんなことはありません。一発の地震で終わるほど日本は弱くない。むしろ今回の国難に際して一致団結して乗り切ることで日本はより強くなると思いますよ」
すると、その年輩社長はこう言った。
「あんさんは、神戸(震災)のときを知らんから」
●そう言われれば絶句するしかない。
だが、16年前の地震を知らない訳ではない。むしろ、よく知っているつもりだ。なにしろコンサルタント開業一年目の40歳のときである。
1995年1月17日未明に突如おそった「阪神・淡路大震災」は都市型の直下型大地震であり、揺れの強烈さは今回よりひどかったと思われる。
●また、そのわずか二ヶ月後の3月20日には、「地下鉄サリン事件」がおき、東京を大混乱させたのも今の状況に似ていなくもない。
そのあと、日本は本当にダメになったか?
ダメになどなっていないのだ。
●その年の11月23日にカウントダウンしながらお祭り騒ぎで発売された「Windows95」をきっかけにインターネット利用が始まった。
その後、猛烈な「IT革命」が日本経済を牽引し、「ITバブル」、「ネットバブル」という言葉をつくっていった。
●地震そのもので日本がダメになることはない。大切なのは気概だ。
需要の創造、市場の創造である。
景気回復の先導役をやるのも社長の仕事。自社のためだけでなく、お客や地域や国のためにも元気にやろう。今ほど気概とアイデアにあふれた元気な社長の出番が必要なときはない。
「がんばれ社長!」、あなたの出番だ。