●3月2日号のつづき。
「我が信条(Our Credo)」で有名なジョンソン・エンド・ジョンソン。
・・・我々の第一の責任は、我々の製品およびサービスを使用してくれる医師、看護師、患者、そして母親、父親をはじめとする、すべての顧客に対するものであると確信する。
・・・
からはじまるA4用紙一枚の価値基準。世界で働く社員全員(約11.5万人)でそれを共有している。
●同社にはなんと「チーフ・クレドー・オフィサー」なる役職がある。
経営理念担当の役員がいて、理念の共有や調査など四大施策を担当する。その一つが「クレド・チャレンジ」。正式には、「クレド・チャレンジ・ミーティング」といい、1975年以来続いている公開議論の場。
研修の一貫なのだが、実に率直な議論をする。
・クレドの文面はこれで適切か?
・変更すべきところはないか?
・削るものはないか?
・追加すべきことはないか?
・あなたはクレドを実践しているか?
・実践していなければ行動を変えようと思うか、それとも、クレドを変えるべきだと思うか?
・あなたの職場や上司はクレドを実践しているか?
といったことを世界中の従業員を巻き込んで行う。
●つまり、「我が信条」は岩に刻まれた文章ではなく、柔軟により良いものに進化させる意思が経営陣にあることを示している。そして、事実、細かい点の修正加筆は頻繁に行われてきているのだ。
●次が「クレド・リーダーシップ」。
これはリーダー評価である。ジョンソン・エンド・ジョンソン社のリーダー評価は業績50%、行動評価50%の割合だという。行動評価とは、ずばり、クレドの内容がどの程度実践されているかを問うものである。
業績が抜群でもクレドに沿っていなければ立場は保証されない。
●そして「リビング・ザ・クレド」。
リビングというと居間を連想するがそうではない。
この場合は、クレドが現場で活きているという意味での”リビング”である。
A4一枚の「我が信条」を補足する副読本のことで、どうしても観念的になりがちなクレドの内容を現場に当てはめて解説しているのでわかりやすい。
●最後が「クレド・サーベイ」
クレドが現場で実践されているかどうかを世界中の社員を対象に無記名でネットアンケートするもの。
全従業員の99%がアンケートに協力する。かつては181項目あったが、118、78と順に項目を減らし、2010年からは56項目になった。項目数はかなり減ったがそれでも回答に要する時間は一人20分程だという。
●ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人でチーフ・クレドー・オフィサーをやられていた堀尾 嘉裕(ほりお よしひろ)氏によれば、「クレド・サーベイ」の本質はES調査(従業員満足度調査)であるという。
企業競争力を高めるためには社員のエンゲージメント(帰属意識)が不可欠。そのエンゲージメントを測定する方法でもあり、クレド・サーベイは本社役員にとって、もっとも重要な経営判断の元データとなっている。
●エンゲージメントの低下、すなわちESの低下はやがてCSや業績の低下につながる。最も早い先行指標がESなのだと堀尾氏。
氏によれば、「クレド・サーベイ」を行う会社が増えているのは結構だが、間違ったサーベイを見かけることがあるという。
それは、アンケートの設問があまりに恣意的であること。
たとえば経営陣が気に入るような設問や選択肢が用意されていたりすると、いかようにでも社員の意思をねじ曲げることができる。だからどのようなサーベイの設問と選択肢にするかはとても重要な問題。
その点で、IBMの「オピニオン・サーベイ」はとてもよくできていて、ジョンソン・エンド・ジョンソンも大いに参考にしたという。
●調査することだけで満足している会社もあるが、大切なことは改善アクションにつなげること。
つまり、次年度の経営計画の施策に反映させるためにサーベイがある。
あなたの会社にも「経営理念」があれば、その浸透4大施策という視点でジョンソン・エンド・ジョンソンから学ぶことがたくさんあるだろう。
【読者の声】————————————————–
タイレノール事件、全く知りませんでした。
全品回収と聞いて、パナソニックの暖房器具の回収CMを思い出しました。「やりすぎじゃないか?」と思っていましたが、タイレノール事件を知ると、パナソニックは決してやりすぎじゃないと思いました。
<武沢より>
パナソニックさんは、ストーブ事件の後処理をジョンソン・エンド・ジョンソンさんから教わったと私は聞きました。