最近買った雑誌書籍をながめていたら、宝島社のものが多いのに気がついた。同社が最近がんばっているのだ。ビジネス関係の新境地を切りひらいている様子がよくわかる。今日はその中から、同社刊『ドラッカー的未来社会 図説これならわかる』を読んで印象的なところをピックアップしてみた。
この雑誌の目的はシンプルだ。
ドラッカーの最新著書『ネクスト・ソサエティ』を、川井健男氏が図を多様して要約・解説したものである。
ドラッカーの本はすごく良い本ばかりだが、大作が多いせいか私の周りの経営者仲間では通読率が低いようだ。
「すっげぇ、こんな凄みのある内容が書かれていたのですね。もっと早く知っておけば良かった。」というような感動と興奮がドラッカーの本にはある。だがそれは、『現代の経営 研究会』というような、輪読を義務づけたような場でない限り読みにくいのが難点だ。
ドラッカーに限らず、世界的な学者や思想家のメッセージをキャッチする必要があるのは企業経営者なのである。そこで、宝島社の企画のような図説雑誌が誕生したのだと思うが、狙いは良い。もちろん、この雑誌だけを読めばこと足りるというほどのものではないが、ドラッカーの最新メッセージをてっとり早く知るうえでは役にたつ。
さて私たちが今直面している経済的難局。これを説くかぎは、経済を理解することではなく社会の変化を理解することだ、とドラッカーは強調する。社会が今どのようになっており、今後どうなるかを正しく認識していないと、経済・経営の舵取りを誤るのだ。
すでに始まった新しい社会を「ネクスト・ソサエティ」と言い、その中における新しい企業経営スタイルを「ネクスト・カンパニー」とドラッカーは名付けている。
アメリカを除いた先進諸国のすべてが抱える構造的問題の一つは、少子高齢化である。先進国では、国民の人口が減少するばかりでなく、ものすごいスピードで高齢化が始まっているのだ。
二つめの構造的変化は、知識社会だ。希少性という意味で、古い時代にもてはやされたものは、資本である。資本家が力をもち、資本家が知識人を使った。だが、すでに始まった新しい社会では、希少性は資本ではなく知識に移行しているとドラッカーは指摘する。つまり、資本よりもモノをいうのは知識なんだ、という構造的変化を理解しておく必要があるのだ。
知識社会をリードする存在が知識労働者といわれる人たちだ。それは、企業経営者や高度技術者だ。そうした知識社会の進行がもたらすもの、それは、50年もの長きにわたってひとつの仕事をするのは長すぎるという現実だ。
二十歳から七十歳までもの間、同じ仕事でメシが喰えるような時代でもないし、喰えたとしても飽きてしまうはずだ。
であれば、企業のスタイルが根底から変わるはずだ。知識労働者の台頭は製造業者の地位を低下させ、雇用形態の変化や個人の組織離れを助長するのだとドラッカーは予測する。ネクストカンパニーにおいては、企業の正社員は経営者だけであり、あとはすべてアウトソーシングになる。プロジェクトが終わると解散していく脱着可能な組織になり、昔からある上司と部下という関係は消えてなくなるのだ。
また、フルタイム正社員という雇用だけではなく、パートタイムや契約社員、臨時社員や顧問という形での採用が増えることも意味する。その結果、役職が上に上がるという意味での出世志向をあおる人事制度は意味をなさなくなる。
企業も個人も今以上に職種の変更が盛んになる。その結果、継続的に教育を受けるための教育サービスが必要になる。企業と学校を垣根なしに行ったり来たりできる必要があるのだ。少子化によって冷え込んだにみえる教育産業が、じつは新たな成長産業になるとも指摘している。
<明日につづく>