●「同級生を斬って捨てるなんてひどい」という感想メールもいただいた昨日号。たしかに斬りはしたが、捨ててはいない。
時間の余裕があればまた酒でものみながらQ君とじっくり語り合いたいと思っている。
★2011年2月22日号「がんばれ!Q」
→ http://www.e-comon.co.jp/magazine_show.php?magid=3457
●でも、時間の余裕がまったくなくても、酒を酌み交わすのが楽しみな人もいる。親友のZ氏もそのひとり。
猛暑も終息にむかいつつあった昨年のある日、「妻があなたに相談がある」とZから連絡が入った。
「え?奥さんが。ぼくに相談?なんだろう」
「ま、詳しくは会ってからということで。新丸ビルで一席設けたいが来週ならいつがいい?」と強引だ。結局、遅めの夕食会をやろうということになり、翌週三人でお目にかかった。
●夜景が大変美しいレストランだった。
白のスパークリングで乾杯し、しばし談笑した。考えてみれば、奥様とこうしてゆっくりお話しするのはこれが初めてだ。正面から美しいお顔を拝見するのもこれが初めてかもしれない。
多少緊張混じりで宴がすすんだところで、「実は…」とZが要件を切りだした。こちらも居ずまいを正す。
●「妻が本を書きたいらしい」とZ。
「へぇ、すごいね」ととりあえず称賛のことばをおくった。
「そこで、ものは相談なんだが、なんとか出版にこぎ着けてやりたい。あなたに力を貸してもらえないか」という。
「え、ぼくが?もちろん奥さんの応援はさせてもらうけど、出版の話をもっていくのなら、相手を間違っているのじゃない?」
「いや、武沢さんでなきゃならん」
「そういう話は土井さん(エリエス)や鬼塚さん(アップルシード)にもっていくものでしょう、ふつう」
「それは分かっているが、まずはあなただ」
「たしかにぼくは本を何冊か書いたけど、だからといって出版界に顔が利くわけではないよ」
「顔が利かない人には頼まない。それよりまず武沢さんの視点で妻の原稿を読んでやってほしい。まずはあなたが原稿をどう思うかだ」
「分かった。奥様、まずは原稿を読ませてもらってそれから相談しましょう。それでも遅くないでしょ。ちなみに、どんな本になるのですか?」
「A型ボードの本だよ」とZ。
「えーがた・ぼーど?なにかのソフトウエアか最新のマシン?」
「そうじゃない。商店やレストランの店頭にある広告立て看板のことだよ」
「ほ~、それがA型ボード。たしかにAの形をしているね。奥さん、そういうご趣味があったのですか?」
「趣味といいますか、あるきっかけがあって興味をもちはじめ、それ以来ずっとA型ボードの事例を集めてきました」
「ほぉ、おもしろそうですね。是非、原稿を読ませてくださいよ」と乗り気になってきた。
●内心では、”大きい宿題をもらっちゃったな”と思いつつも、こういう相談をもちかけられるのは男冥利に尽きる。そう得心し、一気にスパークリングを飲みほした。
「今度はこれにします」と赤ワインをオーダーした。
●頃合いをはかっていたのだろう。奥様がカバンの中をしきりにごそごそしている。やがて大きい封筒が出てきた。
一瞬、「謝礼かな」と思ったが、そうではなかった。
「こちらが原稿なのです」と、大量の原稿用紙を手渡された。
「うわっ、もうできてるのですか?」
「はい、9割方できています。とりあえず今日はさわりの部分だけを持参いたしました」
それは、数十ページあった。
●赤ワインが来たのも気づかずに15分ほど読みふけった。
「まえがき」の文章がしっかりしている。分かりやすい文章を書かれるので感心した。この作者はこの本を書くにふさわしい人であることが、きっちり書かれている。その後の事例も豊富だし目次もよく考えた構成になっている。
これは話が早そうだ。あとはデジカメで実例がたくさん掲載されていれば日本中の商店やレストランで読まれるのではないかと思った。
こうした実務書は出版社のほうでも是々非々の結論を出しやすいだろうと思った。
●原稿を読み終え、「イケルと思いますよ」と私。
「ほんとうですか?」と奥様。
Zは無言だったが、おそらくZも自信があったから私に話をもってきたのだろう。
●「どんな出版社から出したいというイメージはお持ちですか?」と聞いてみた。たぶんこうした実務書は、講談社や東洋経済新報社ではないだろう。日本経済新聞社でもないはずだ。
●「とくに出版社の希望はありません。それより本にして下さるところがあれば、どこでもうれしいです」と奥様。
私なりに作戦を考えそれをお伝えした。
●「まず、社長が直接読んでくれそうな出版社に打診してみましょう」腹のなかでは、サンマーク出版、明日香出版社、こう書房の三社は出版していただいた実績があるので、頼みやすいと思っていた。
あと、フォレスト出版とマネジメント社とは社長と面識があり、多少は無理を聞いてもらえそうな気がした。
広告や個人的なつながりでご縁があるのは日本経営合理化協会、致知出版社、日本実業出版社、実業の日本社、日経BP社、講談社ビズ、祥伝社、ダイヤモンド社、PHP出版、大和書房などだが、無差別に原稿を送りつけるのだけはお互いに不誠実なのでやめようと思った。
●「まず植木社長(サンマーク出版)にご意見を聞いてみましょう」と提案した。
「えっ、サンマークさんですか。うれしいです」と奥様。
翌日、さっそく植木社長にメールでお願いした。すると即レスで快諾をいただいたので、原稿をお送りした。一週間後、植木社長から直接ご返事をいただいた。
<「ある秘密プロジェクト」 つづく>