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ビスマルク撃沈

●ある会社の忘年会に呼ばれた。社長あいさつのあと乾杯があり、次いで各自が前に出て来年の仕事目標と個人目標を一つずつ発表することになった。

・○○の資格を取ります
・60万円貯金します
・営業目標の完全達成を目指します
・人間ドックでオールAを取ります
・××部門の売上を1億にします
・ドラッカーの本を全部読みます

など、威勢の良い目標が次々に披露された。そんな中、ある女性スタッフが異色な発表をした。

「私の目標は、その日その日を全力でやるだけです。いつも自分らしさを見失わないように一年を過ごしたいです」

会場が一瞬だけ静かになったが、やがて何もなかったかのように会が進んでいった。

●その女性スタッフの発言だけが浮いていた。彼女の発表は、目標ではなく心構えを表明したに過ぎない。
酒席なので私は黙っていたが、もし社内会議などでも同様の発言をしているならば上司として注意せねばならない。
目標とは測定可能なものであり、期限があり、成長を伴うものであってほしい。

●「成功への道しるべ」というメールマガジンがある。大阪のサクセスなにわ株式会社の田中得夫社長が月二回発行しているメルマガで、よくこれだけモティベーションネタが集まるなと思うほど、毎回示唆に富んだ事例が紹介される。

★「成功への道しるべ」→ http://www.sgp-jp.com/

●「がんばれ社長!」2004年7月30日号でもご紹介した「戦艦ビスマルク号の撃沈」は田中社長が教えてくれた話である。
くしくも昨日(11月30日)はチャーチルの誕生日だったが、来年目標をつくる上で、このチャーチルの話は参考になるので、あらためて触れておきたい。

以下、「成功への道しるべ」を武沢要約でお届けする。

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第二次世界大戦時、ドイツの巨大戦艦“ビスマルク”は、連合国軍にとって恐るべき脅威でした。
その“ビスマルク”が、北海水域から公海に向ったという情報はつかんだものの、イギリス軍には対抗できる軍艦も航空機もありません。
幕僚達は、首相のチャーチルに対し、「避けるしか対応はない」と忠告していました。
しかしチャーチルは、「成功の五原則」のうちの第一法則の重要性を十分認識していたようです。

その第一法則とは次のような内容です。

・・・
「考えを鮮明に結晶化せよ」

“何を達成したいのか、はっきりとした具体的な目標を決意することです。熱意の権化といわれた十字軍勇者のように、その目標に向って痛烈に直進専心することです。”
・・・

チャーチルと艦隊司令官との、その時の電話の記録が残っており、それを再現することで、チャーチルの意思がありのままに伝わってきます。

チ:「司令官! 君の任務は“ビスマルク”を沈めることだ。それが君の唯一の任務だ。この任務に比べれば、その他のことは一顧の価値もないといってよい」
司:「はい、首相閣下」
チ:「君は、“ビスマルク”を沈めるために必要なあらゆる手を、あますところなく打っているだろうね」
司:「はい、首相閣下」
チ:「可能な手段だけでなく、困難が伴う不可能と思われるような手段まで考えておくことだ。全世界の目が我々の上に注がれている」
司:「はい、首相閣下」
チ:「よろしい。君の任務は“ビスマルク”を沈めることだ。では!」

結局、壮烈な戦いの末、英国軍はビスマルクを撃沈したのです。
もしチャーチルが艦隊司令官に、次のような電話を入れていたらどうでしょうか。

チ:「司令官、我々が戦力で劣っているのは十分承知している。しかし君たちには、とにかく最善を尽くし、全力を出して頑張ってほしい。幸福を祈っている。では!」

“最善を尽くす”とは何を達成することなのでしょうか?
上司からの激励のつもりであったとしても、あいまいな方針や指示は部下の無限の潜在能力を要求することにはなりません。

成功は努力の積上げでなく、あくまで、目標からの逆算なのです。

サクセスなにわ(株) 田中得夫 http://www.sgp-jp.com

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●成功は目標からの逆算。だから目標は明確に定めなければならない。

「最善を尽くす」とか「その日その日を全力で」とか「自分らしく」ではダメなのだ。個人生活での目標ならどんなことを書こうと自由だが、ビジネス目標は「ビスマルクを沈める」というぐらいに明確でなければならない。

●また、10個も20個も目標があるのはおかしい。本当に大切な目標は1個であり、それを達成するために複数のサブ目標やサブサブ目標があると考えよう。

●来年、一番達成したいことは何なのか。その目標に比べれば他の目標は顧みるに値しないほど大切な目標はどれなのか。

人生には幾つかの側面があるが、すべての側面が均等に重要なのではなく、軽重(けいちょう)というものがハッキリある。それを大いに自覚し、忘れないようにしたい。