●大垣の「せいゆう会・経営指針講座」が今週終了した。
主催は、岐阜県中小企業家同友会の西濃支部。
「武沢さん、大垣のためにやってくれないか」と依頼を受け、今年6月から毎月一回大垣に出向き「経営指針書」をつくるお手伝いをしてきた。
「経営指針書」とは同友会内でつかわれる用語で、一般的には「経営計画書」とよばれるものである。
●今回、修了証書をもらえたのはわずか10名(修了率50%)と、かなり低い修了率となってしまった。大垣出身の私としては、大変遺憾である。名古屋でやる場合、過去15年の平均は90%ほどである。大垣の経営者に奮起をうながしたいが、大垣市民もよそに負けない努力家が多いので、今回の修了率の低さは土地柄のせいではなく、やり方の問題も大きいだろう。
●主催者の希望で月一回開催×6ヶ月というゆっくりしたペースでやってきたが、名古屋同様に、2~3ヶ月で仕上げてしまう短期集中型にすべきだったと思う。もしくは、二泊三日で一気に作りあげてしまう手もあった。
●さて、その「大垣・せいゆう会」の最終日におもしろいことが起きた。会社は社長次第、目標次第なんだと改めて感じた。
最終回は全員が自社の経営指針書の要点を発表する。自社の経営理念と方針、それに数字目標と顧客創造計画を発表し、最後に社長個人としての経営力向上対策を話す。持ち時間はたった4分しかないので、要領よく話さねばならない。自宅でリハーサルしてくる社長も少なくない。
●ある農場経営者が前にでた。
この会社は日本でも稀なバラやハイビスカスなどを生産し、絞り込んだマーケットでいくつもの国内トップシェアをもつ会社だ。計算してみたら、社員一人あたりの年間粗利益は4千万円にもなった。二代目社長のようだが、考え方が実にしっかりしておられて将来楽しみな会社だと思った。
●にもかかわらず発表後に、「花屋って儲かるんですか」という愚問が出たが、おそらく数字の箇所を見落として聞いていたのだろう。
次に発表されたのは建築と土木を営む社員数9名の会社だった。数字欄が空白のまま発表を終えたので、そこに質問が集中した。
●その社長いわく、「私は数字の講座のときに欠席したのでそこは空欄のままです」という。
他の経営者から「空欄のままで社員に発表するのですか?数字目標がない経営指針なんてありえない。たとえ講座を休んでも、目標は自分で入れるべきじゃないですか?」と突っ込まれた。
●突っ込まれた社長は言い訳した。
「最近仕事がなくて、ますます粗利益が減っている。時にはマイナスでも受けざるを得ない。平均すれば10%~15%の粗利益になるが、正直、数字目標はたてにくい」と言い訳にならないコメントをしていた。
●その次に登場したのは、同じ建築業の経営者。社員数は3名とかなり小さいが二代目の若社長だ。
「がんばれ社長!のメルマガを数年前から読んで、かなり影響を受けてきた。最近紹介されたシャンプーまでamazonで買うほど影響を受けている」という。
●彼の発表は実に堂々としていた。よく考えられた内容だった。何よりも驚いたのは粗利益率の高さである。つい先ほどの社長が「粗利益マイナスでも受ける」と語っていたが、こちらの場合は40%の粗利益を目標にしていて、現状は33%だという。
●発表後、粗利益に質問が集中した。
なぜこの両社にこんな差が出るのか?ということだ。3名の社長いわく、「うちには特別な技術も商品もコネもない。あるのは、数字を押さえて仕事をやろうという認識を皆がもっていること。見積りを出すとき、原価や経費をしっかり弾いて、それに目標粗利益を確保した上で出すようにしている。当然、利益が出ている。もっとしっかり管理すれば、40%という粗利益目標は充分達成できる」ということだった。
あきらかに「管理力の差」である。9名の社長は絶句していた。
社長の管理に対する意識の有無だけで粗利益0%から粗利益40%までもの差がでるのだ。
●その後、全員参加で打ち上げ会をやった。9名の社長も3名の社長も来ていた。こんなとき、私が9名の社長だったら必ず3名の社長に粗利益確保の方法を教えてもらうだろう。
周囲に人がいるからメンツもあるのであれば、その場で聞かないにしてもアポは取る。
●だが、この打ち上げではそうした話題が一切でなかった。
きっと9名の社長が先輩であり、経験も長く規模も大きいのだろう。
だが、私は思う。
何かに秀でた人がいればその分野でその人が先生なのだ。先生をたくさん持てる人は成長する。先生を持ちたがらない人、先生に気づかない人は成長しない。
●77歳になる俳優・児玉清氏は、41歳の福山雅治氏と仲良しで「アニキ」と呼んでいるそうだ。福山のものの見方、考え方が「アニキ」にふさわしいという。
三回りも年下の「アニキ」が作れるから児玉は若い。あなたは、「先生」「師匠」「アニキ」「先輩」を何人持っているだろうか。