●岡田武史監督がはじめて「ベスト4を目指す」と公言したとき、サッカー関係者や評論家、マスコミは皆それに追随した。
やがて誰もが「ベスト4」を言い始めたとき、辛口評論家のセルジオ越後氏は『週刊プレイボーイ』で水をぶっかけるような発言をした。
「岡田監督が常々公言する”ベスト4”の目標に対し、冷静に現状を見れば、誰だって根拠のわからない無理な目標だと思うよね。でも、日本のメディアは遠まわしに触れるだけで、それをハッキリと指摘しない。このままじゃ単なる目標に終わる。」
●それを伝え聞いた岡田監督は激怒してこう言った。
「目標に根拠があるって、どういうことですか?ブラジルがベスト4に入る根拠は?ドイツがベスト4に入る根拠は?そんなもんはどの国にもないんですよ。”単なる目標”とおっしゃるが、我々は “目標が全て” なんです」
●だがその岡田監督もしばらくして冷静になったようで、ベスト4を目指す戦い方を記者団を前にこう述べている。
「日本は世界の強豪に総合的な身体能力では肩を並べることができないかもしれないが、持久力と瞬発力では勝てる。根本的に日本人には武士道から始まった(精神の)強さがあると考えている。だが、社会が便利、快適、安全なので闘争本能のスイッチが切れてしまっている。再びスイッチが入ればわれわれは十分に戦える。個の技術を高め、われわれの特質である組織を生かすことができれば十分にチャンスはある」(2009年12月17 日本外国特派員協会にて)
●組織を固めて守り抜き、カウンターとセットプレイで得点するというイメージがすでにあったのかも知れない。
だが強化試合で4連敗した。批判を一身に浴びたが、そのおかげで今の戦い方ができるようになったわけで、負けることにも大切な意味がある。
●ところで、今大会はブレるボールを使っていることと、高地での試合が多いことなどから、パスミスやキーパーのファンブルが目立つ。
さらに決勝トーナメントに入ってからは審判のミスが相次ぎ、試合に水を差している。オシム前監督も今大会の試合内容を酷評しているが、もっと記憶に残るような好ゲームを見せてほしい。
注目のメッシ、ロナウド、ルーニー、トーレスといったスターたちもまだ英雄になれないでいる。ルーニーにいたっては無得点のまま大会を去ってしまった。
●ところで岡田監督の頭の中には、すでに「優勝」の二文字がちらついていると思う。いや、真剣にそれを考えているはずだ。
自分を高く売り込むために個人プレイに走る選手が多い外国チームに比べ、日本はそんな選手がいないのが強み。(大久保選手と長友選手に若干そんなニオイがするが)組織第一で貫いているが好結果につながっている。
●以下、私が考える優勝までのシナリオ。
今夜のパラグアイ戦は苦手な南米チームだけに序盤はリズムがつかめず苦しい場面も多いだろう。だが、相手の攻撃パターンも分かって順応しはじめた中盤からは日本がボールを支配し、攻勢に出る。
長友・駒野らのサイドからあがるクロスボールを本田、大久保、松井たちが決めて2点差で勝利するだろう。
次の準々決勝の相手はスペインかポルトガルということになる。FIFAランキング2位と3位で、どちらも優勝候補。
だが、両チームとも今大会では本来の強さがでていない。結局、無得点のまま延長戦にもつれこみ、0-0のままPK戦になってイケメン軍団・スペインが勝つだろう。
イケメンでは負けていない日本は、準々決勝で無敵艦隊・スペインを1-0で封じ込め、みごと準決勝に進む。
この時点ですでに岡田ジャパンのベスト4公約は達成されるが、監督も選手も満足していない。むしろ、面構えはますますサムライらしく引き締まり、誰もが優勝を言葉にするようになる。
準決勝の相手はアルゼンチンとドイツの勝者だが、ここが日本にとって一番の難所となるだろう。
相手として戦いづらいのは縦への突破力と長身選手が多いドイツの方で、ドリブルとパスが多いアルゼンチンの方が組織的に守りやすいだろう。どちらにしても楽な相手ではないが、延長戦にもつれこんで日本は2-1で勝利する。
決勝の相手はオランダかブラジルになるはずだ。できればオランダに出てきて欲しい。なにしろ一次リーグで日本は一度負けているから、その相手に決勝で勝てば文句なしの優勝となるからだ。
もちろんブラジルが出てきても難しい試合になるが、今年のブラジルはあまり怖くない。W杯の決勝でブラジルに勝つことほど名誉なことはなく、決勝はオランダでもブラジルでも1-0で日本が勝って日本中を歓喜と興奮に包み込み、世界をアッと驚かせることだろう。
今大会で得点王に輝いた本田選手には大阪府知事から「感動大阪大賞」が授与され、岡田武史監督には「国民栄誉賞」がおくられるだろう。
また国会は、決勝戦のあった7月11日を「勝利の日」として新たな祝日に加えようとするが、祝日の多さではイギリスと並んで日本がすでに世界一のため、見送られることになる。
●いずれにしても、W杯での日本優勝は2022年大会開催に立候補している立場として大きな武器になるだろう。
奇しくも決勝戦のある7月11日は、参議院選挙の日。
どの政党が「勝利の日」として喜ぶことになるのか、サッカー以上に予断を許さないが、一番困っているのはマスコミだろう。
7月11日(日)の夜、参院選特番を組むべきか、W杯決勝進出特番を組むべきか究極の選択が迫られることになる。
こんな予想が現実になってほしい。