●先日、名古屋で開催している「経営指針講座」の受講者約30人にこう申し上げた。
・・・次回までにあなたのWish Listを200個以上書いてきて下さい。
それと同時に、社員からもWish Listを集めましょう。そちらの数は何個でも構いません。会社がどうあってほしいか、何をすべきかなど、何でも良いので建設的な書き方でWishを書いてもらって下さい。
あなたのWishと社員みんなのWishを実現するために「経営指針書」をとりまとめるのですから、必ずお願いします。
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●あれから約2週間経った昨日、第二講座を開催した。
ほとんどの社長が私との約束をまもり、実行してくれた。そして、その反応は二つに分かれた。
ひとつは、「Wish Listを書いてきてくれ」と社員に記入用紙を手渡したが、社員が身構えてしまってあまり協力してくれなかったという会社。
もうひとつは、”これ幸い”にとたくさんのWishが集まった会社である。
●そんな中、S社長がおどろきの体験談を聞かせてくれた。
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仕事のことでも個人的なことでも良いので社長に公開できるWishだけを「Wish List」の用紙に書いてきてほしい、と社員に伝えた。
社員からの反応はイマイチで、これは “うまくいかない” と直感した。
案の定、社員から集まってきたWish Listは低調なものだった。30名の社員がいるが、一番多い人でも30個くらい。一番少ない社員は2個しか書いてきてくれなかった。
このままでは、経営指針書そのものへの興味関心も低いものになってしまうと感じた私は、すぐに「Wish List面談」を開始した。
「あなたのWish Listの説明を聞く」という名目で一対一の対話を始めた。面談をやってみて分かったことは、「隠れWish」の存在。
つまり、こんなことを書いても許されるのだろうか、というWishが結構ある。
たとえば、「支社長になりたい」などというのは現支社長に申し訳ない気がするし、「社長になりたい」と書くと社長に誤解を与えるかもしれないと思い遠慮していたという。
また、社長の胸のうちにしまっておいていただけるなら聞いてほしいWish はまだまだあることも分かった。例えば、○○さんの仕事ぶりに問題があると思うので指導してほしいとか、上司とウマがあわないので私を別の部署に異動してほしいなどということは、紙に書きづらいという。
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●そんな話しを聞いて、私は申し上げた。
「Sさん、一対一で『Wish List面談』をやろうと思いつかれたことがすばらしい」
するとS社長はさらにこんな話しを聞かせてくれた。
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決して走らない社員がいた。彼の名を仮にA君にしておく。A君は良くいえば落ち着いている。悪く言えば、いつもやる気がない。
もうすぐ10年選手だが、ここ数年来、いつ彼から辞表が提出されても驚かないようになっていた。今回のWish Listだって、わずか2個しか書いてこなかった。そんな彼と「Wish List面談」を始めた。
きっとすぐに終わるだろうと私は思っていた。ところが彼との面談は午後6時に始まって深夜0時まで6時間続いた。お茶一杯すら飲まず、延々と二人で話し合った。
A君の苦悩と煩悶、それに、会社に対する誤解と偏見、それに私や周囲の誤解、二人っきりで丁寧に思いのほどを披瀝しあっていった。
やがて2個しかなかった彼のWishはその後増え続け、6時間で爆発的な数になった。彼の表情もみるみる輝きを取り戻していった。
「お、もうこんな時間だから帰ろうか」と私から言うまで話は尽きなかった。
次の日の昼、外出するために駐車場へ向かっていた私をA君がうしろからが呼び止めた。彼の息はハァハァと弾んでいた。オフィスからこの駐車場まで走ってきてくれたのだ。その時、多くの社員が久しぶりに走っているA君の姿を見た。
Wish Listは人を走らせるものだとそのとき教えられた。すばらしい技法を教えていただき、深く深く感謝申し上げたい。
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●その話しを聞いてK社長(半年後に社長になる30歳前後の経営者)も手を上げた。氏の話を要約するとこうだった。
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社員が自分のWish などをリストにして提出してくれるわけがない。
自分だったら提出しないか、適当なことを書いてお茶を濁すだろう。
正直にいって、そう思っていた私は、社員にこう告げた。
Wish Listを宿題にすると嫌だろうから、今から15分間だけみんなで一緒に作業をやる。その間に書けるだけかいて、そのコピーを置いていってほしい。どうしても○秘にしたいものがあれば、そこだけマジックで塗りつぶしてくれればいい。
すると社員からまったく予想外の反応がかえってきた。
本当に何を書いても良いのですか?仕事以外の事も書いて良いのですか?だったら、15分じゃ短すぎます。30分でも足りませ~ん。
結局、社員は皆、家に持ち帰ってたくさん書いて提出してくれた。
その内容をみて、僕より未来に対して希望にあふれている社員がたくさんいることを知った。
僕はそれを見て、時期社長として社員を見くだしていたようで恥ずかしく思った。
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とにかく、ドーンとぶつかっていくことだ。