●「ちょっと面会をお願いしたい」というメールを受け取ることがある。お相手がメルマガ読者であり、こちらの事情も許せばなるべく対応しようと思っているが、「2時間は欲しい」などと言われたら困る。
「30分、いや20分でも結構です」とハードルを下げていただくと対応しやすくなる。
●先日はこんな人がやってきた。「お金がない」が口ぐせの士業のAさん(33歳男性)。
Aさん曰く、
開業してもうすぐ4年になるが、この4年間ずっと金がない。自宅で一人事務所をやっているが、金がないのでアルバイトも雇えない。いつも資金繰りが厳しく、妻の収入に助けられますます頭が上がらなくなってきた。
一ヶ月のおこづかいは3万円しかないから異業種交流会も二次会には出られない。どうしたらこの金がない状態を抜け出せるのか、武沢さんに会ってきっかけをつかみたい。
●「Aさん、どこか体調でも悪いですか?」と聞いたほど覇気がなく、話しぶりに力がない。話の内容も地に落ちていて、思い出すだけでもこんな言葉がでてきた。
・リーマンショック以降の不況で仕事が激減している
・開業と同時にスランプを迎え、4年経ってしまった
・お金がないのは、僕以外の同業者もみなそうだ
・しまむらとブックオフと百均があるので助かっている
・森永教授が言っているように年収300万でもやってゆけなくはない
●「おいおい!」
あまりにしけた顔でそんな話しを続けるAさんを最初こそ励ますつもりで聞いていたが、私は声を荒げて叱責を浴びせてしまった。
「金がない、金がないってあなたね、僕は『愛の貧乏脱出大作戦』のみのもんたじゃないよ。あなたを救うために直接なにかのお手伝いはできないからね。それにね、不況で仕事も金もないとあなたは言うけれど、日本には仕事もお金もたくさんあるから。景気が悪いとはいっても日本の経済力と富は世界屈指なんだよ。あなたのところにお金が来てないだけのことであって、あなたの周辺には莫大な仕事とお金が流通しているの。さっきから口ぐせのように連発しているその『金がない』という言葉、もう二度と使わないと決めなさいよ。あなたは専門家であると同時に経営者、リーダーなのだからそれらしくありなさい。きっと今のあなたのしぼんだ気持ちに福澤諭吉さんが愛想を尽かして逃げてったまま戻ってこないんだよ。どうしたら福澤さんが戻ってきてくれるか、しかも、たくさんのお友だちを連れて団体で戻ってきてくれるかを考えなさい。世間にはお金がいやというほどたくさんあるんだから」
●後は自分で考えなさい、ということだ。本当はもっとコンサルらしく、いろんなことを申し上げたかった。
たとえば、Wish Listを書きだそうとか、言葉づかいを積極的なものに変えようとか、具体的な目標と行動計画を作ろうとか、成功のイメージをビジュアライズしようとか・・・。
●しかし、この時のAさんのメンタリティではそうした助言も役立たないだろう。気持ちが水びたしだから。そんな時は癒しか叱責しかないと思い、このときは叱責を選んだ。
すこしでも彼の気持ちが渇いてきたとき、今度は具体的な助言が有効になる。
人間の運命はいつでも立て直すことができるが、それにはまず本人が心を乾燥させることが先決だ。気づきがあれば、心の乾燥は一日あれば充分だ。