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本業への情熱

伸びている産業、これから成長が見込める産業にシフトしたほうが、成功しやすいように思う。そのほうが時流に乗りやすいではないか。

だが、みんながそれと同じことを考えるとどうなるか。結局は、成長産業でも、あっという間に過当競争という状態が生まれ、利益は出ない。じゃ、何もしないでいて良いかと言えば、それは確実に衰退を待つばかり。まさしく「前門の虎、後門の狼」だ。

大切なメシのタネである今の本業の衰退をどう考えるか、がポイントだ。一つの例として結婚披露宴産業を見てみよう。

いまや、30才を超える女性のうち半数以上が独身という状態にある。今後、少子化とあいまって婚礼人口は激減し、ブライダル産業は先細りの一途だ。敏感な人なら真っ先に逃げ出したい産業にちがいない。我がオフィスから徒歩5分、婚礼の公的施設「名城会館」もさきごろ廃業し、昨年末には解体を終えている。

では、ブライダル関連企業が全滅なのか?答えはもちろん、「否」である。

福岡ダイエーホークスの社長であり、「平成の再建請負人」とも称される高塚猛氏が手がけた、盛岡グランドホテルやシーホークホテル&リゾートなどは、ブライダル(披露宴)で見事に生き返ったのだ。

では、高塚氏は何を考え、何を実行したのだろうか。

その答えは、高塚社長の自著、『21世紀のブライダル戦略』(オータ・パブリケイションズ刊)の中につぶさに書き記されている。

たしかに一般論としては、少子化が進行し、そのうえ独身比率が高まるとブライダル市場は縮小するに決まっている。問題は、それをどう認識し、いかなる手を打つかで企業力の優劣が生まれるのだ。

すぐに目先の手段に走ることがかえって市場全体と、自社の首をも絞めていると著者は指摘する。

「披露宴なんてもったいない。そんなお金があれば、別の目的に使おう。」と披露宴をやろうとしないカップルが増えている。そうした若者たちに対して、披露宴側はどんな対策を講じてきたか。

・低料金のパック商品
・料理や演出のサービス競争
・花嫁衣装のデザインやブランドでの差別化

いずれもが目先の手段だ。「披露宴をやろう」という意識のある人の奪い合いをしているに過ぎないのだ。いやしくもブライダルを本業にしようという者は、披露宴をやる気がない人をその気にさせてゆくところから本腰を入れる気概が必要なのだ。

高塚氏は、一組の披露宴から最低一組の披露宴を受注する方法を考える。また、固定観念にとらわれず披露宴というひとつの商品から利益を生むための方法を次々にうみだす。たとえば、大安や友引などの六輝だ。これにこだわらないようにしないと披露宴の組数は伸びない。そのためには、むずかしい教育も割引価格も必要ない。商談のときにちょっとしたひと言をいえるように、営業社員の教育をすれば済むことだ。お客といっしょにこちら側までが常識の思いこみに浸る必要はないという。

氏の会社、業績はどうか。

年間800組くらいに落ち込むはずだった披露宴が、一年後に1550組に、そして2年目には1700組(全国2位)になった。衰退産業の中にあっても、これが自分の本業であり、この道でメシを食ってみせるという自覚があれば、主力商品はいかようにも育て上げることができるという一つの証明だ。冒頭の「今日の言葉」にもあるが、これを「本業への情熱」という。

「21世紀のブライダル戦略」
http://www.ohtapub.co.jp/booklist/book/bridal21.html