●スノーボードの日本代表・国母選手の腰パンスタイルが大騒ぎになってしまった。一般的には誰がどのような格好をしようとも法に反していない限りは自由なのだが、一国の五輪代表選手が私服ではなく公式ブレザーを着用する場面ともなると一般論は通用しない。
ましてやその後の会見で、質問に対して舌打ちする映像が流れると、彼を擁護する人たちも激減した。私もその一人だ。
●昨年話題になった民主党の「事業仕分け」でも五輪強化費は他の予算同様に予算削減された。
その削減された費用を使ってのバンクーバー入りだということを国母選手はわかっていない。
●民主党議員から、「なぜ選手を強化?そもそも五輪は参加することに意義があるのではないか。ましてやボブスレーなどマイナーな冬季競技を支援する必要が本当にあるのか」と追い詰められ、結局30億円余が削減対象となった経緯があるJOC。関係者にとっては忸怩たる思いを胸に今回の五輪にのぞんだはず。
●ボブスレーだけでなくジャンプのような人気スポーツですら遠征費用や試合の参加費用がなくて、自分でスポンサー探しをしているのが今の経済事情。ましてや世界に通用するアスリートを育成するのは大変なことなのだ。
●今回のバンクーバー五輪で、もしトリノのような惨敗が続けばさらに予算が減らされるという危機感が関係者や選手にはあったはずだ。
そうした危機感が、もともと日本代表という自覚もなければドレスコードなるものも知らない子供のような選手まで動員せねばならない焦りにつながったのではないか。
●今回、社会の洗礼を受けて一番驚いているのは当の本人かもしれない。早くからプロ契約し、観客を喜ばすためのファッションを彼なりに工夫してがんばってきたのだろう。今までも私生活に問題がある若者だったようだが、日本選手団に入らなければ特に話題にもならなかったはず。
●今回の五輪に関していうならば、国母選手はメダルを取らないほうが良い。
もしここで金メダルでもとって日本中を騒がすようなことがあれば、彼の今回の過ちや指導者の過ちが帳消しになりかねない。真摯に反省し、自分がやったことを深く自覚するまではチヤホヤされないほうが彼のためだ。
●ドレスコードを守ることや記者会見でちゃんと受け答えすることは、もともと合意されていなかった期待なのかもしれない。
オリエンテーション教育を間違うとこうなる。
企業と新入社員の関係も同様だ。当社にはいってもらった以上はこういうことを要求するし、こういう期待をかけますよ、という入社前教育が必要なのだと改めて感じた次第。