●キリンとサントリーの経営統合は結局、破談となった。
その理由は”統合比率”にあるらしいが、それは、サントリーのオーナー一族の経営関与をこの先、どの程度認めるか認めないかという問題のようだ。
今回は、両社の経営観や経営スタイルの違いが如実にあらわれた。
だが、そんな根本的なことは、経営統合を発表する前に話し合われているものと思っていたが、実際はそうでなかったようだ。
●ところで、昨夜、新橋の焼き鳥屋で上司と部下とおぼしき二人のサラリーマンがこんな会話をしていた。
A:結局、なんだな。合併はお流れってことなんだよな
B:え?先輩、もともと今回のは合併じゃないでしょ
A:じゃなんなんだ?
B:経営統合でしょ
A:えっ、合併と統合は別もんか?
B:全然ちがいますよ。合併は二つの会社が合体して一つになるわけで、市町村合併みたいなもんですよ
A:統合は?
B:二つの会社がひとつの持株会社を作ってお互いにその傘下に入るわけですよ。ひょっとしたら将来、合併が待っているかもしれませんが、まずは一緒にやってみようよ、という時には統合の方が互いに会社が残るわけで、いいでしょ
A:なるほどな、じゃあ、なんだな。ひらたくいえば結婚の前に同棲しようということか?
B:う~ん・・・・・、ひらたく言いすぎでかえってわかんないですよ先輩
A:それにしても今回の破談は、あれだな。薩長同盟のときの竜馬役がいなかったってことだな
B:お、さすがっすね。こっちは歴史のことがうといんでコメント控えます
●B君の言うとおりで統合と合併は別ものである。
さて、この統合破談のとばっちりを受けたのはアサヒビールで、両社の破談発表後に大きく株価を下げてしまった。
株式市場では、そもそも今回の経営統合はキリンに対して好意的ではなく、その反動でアサヒビールが高く買われてきた。
※昨年の統合発表後の食品株指数比で、キリンは1%アップに対しアサ
ヒは17%アップ
●統合してもキリンはすぐには良くならない、むしろ混乱すると思われていたフシがある。結局、その統合が破談になってキリンも下げたがアサヒビールまでもが失望売りをくらった格好だ。
●今後、こうした経営統合の話題が増えるだろう。
大会社はもちろんのこと、中堅・中小企業の経営者も自社の生き残りと成長をかけて、経営統合という選択肢を考えておくのが常識になるはずだ。
経営不安の会社を救済するのが経営統合ではなく、強者と強者が手を組む時代が始まっている。
●しかし、かつて経営統合を発表したが、その後、破談となった会社はかなりある。
以下、この10年強における大会社同士の統合破談の例。
富山化学工業と三井製薬工業、セガとバンダイ、東海銀行とあさひ銀行、大正製薬と田辺製薬、近畿日本ツーリストと日本旅行、住友化学工業と三井化学、キョーリン製薬と帝人、セガとナムコ、花王とカネボウ、ビックカメラとエディオン、日本製紙グループ本社とレンゴーなどなど。
●だが、こうした破談会社でも、その後は他の企業と統合するケースがほとんどだ。
「単独では生き残れない」というトップの危機感から、国内企業はもとより、世界中から統合相手を模索するようになるのだろう。
あなたも「経営統合」について、まずは研究だけでもされてはいかが。