●「自営業ばんざい!」と禅太郎さんが叫んだ。
場所は名古屋の酒販売店。
「すごい会議」の大橋禅太郎さんから「日本酒の試飲会があるので、今からちょっと顔を出せませんか」と電話が入った。「え、今から?」、と思いながらも、こんなときにためらっていては男がすたる。
「OK、どこへ行けばいいですか?」と即答した。
●もちろん予定は入っていた。夕方からは和僑会講演もあるので、赤い顔などできない。それに、個人的好みでいえばワインの方が好きで、日本酒はふだんめったに飲まない。
なのに出かけていく私をスタッフはあ然と見送った。
●会場では昨年秋に取れたばかりのお米を初しぼりした日本酒が30種類以上並んでいた。
受け付けで紙を渡される。それぞれの銘柄、産地、製法、日本酒度、アミノ酸度などの数字がならんでいて、コメント欄に感想をメモしながら試飲してゆく。
●「へぇ、これは楽しそうだ」と三種類くらい飲んだあたりで、顔がポッと赤らむのを感じた。このペースだと最後には泥酔してしまいそうだ。
ふと周囲をみると、「ズズズ・・」と音をたててすすりながら口に酒を含み、それをツボに戻しているではないか。
「ははあ、飲みこむものじゃないらしい」と私が忠告すると、「飲みこみたいのが良いお酒」と禅太郎さん。
●ある「にごり酒」がシャンパン風の微発砲の風味がした。聞いてみると、それは麹の活動が活発なのらしい。
香りも上品でどんな食事にもあいそうだったので欲しくなったが、その場での小売りはしていないとのこと。業者向けのイベントなのだからそれも当然だろう。
●しばらくして禅太郎さんから「自営業ばんざい!」の声が出た。
「自営業ばんざい!」という酒の銘柄かと思って近づいてみると、我々のことを言っているらしい。
●試飲会のあと、行きつけのスターバックスでデカフェのコーヒーと水をオーダーし、あえて外のテーブル席に腰かけた。話題はもっぱらリーデルのワイングラス。
「今から山本屋の味噌煮込みを食べてから大阪に向かう」という禅太郎さんを見送ったあと、私はひとりその場で風にあたって酔いを醒ましていた。