人と人との信頼関係や“きずな”とはどのようにして生まれるものだろうか。夫婦の関係、親と子の関係、彼氏と彼女の関係、社長と社員の関係、上司と部下の関係などなど、信頼構築のメカニズムについて知りたいものだ。
先週のある日、「武沢さん、社員の雇用形態について相談に乗ってほしい。」ということで若手実業家M氏が来訪された。彼の会社では長年にわたって正社員のみを雇用して事業を営んできた。しかし、先行き不透明な経営環境に対応するため、複数の雇用形態をもとうと「準社員制度」を作った。
「Mさん、この準社員制度良くできているじゃないですか。一体何が問題なのですか?」と尋ねると、M氏は大柄な体躯のせいか止まらぬ汗を拭きながらこう答えた。
「武沢さん、今わたしが懸念しているのは帰属意識です。正社員の場合は固定給を払ってあげているから大丈夫ですが、準社員に対しては最低時間給をベースにして、あとは成果報酬を上乗せする形態になる。そうした成果分配型の賃金形態で本当に帰属意識を彼らがもってくれるかどうか確信がもてないのです。どう思われますか?」
「Mさんが言う帰属意識って何ですか?」
「(ちょっと考えて、)はい。一つは親分子分みたいなもので、親分を男にしてやりたいとか、親分の言うことなら間違いない、みたいなものって我々の建設業には大切なんです。それと、自分たちが動かしている会社なんだという一体感のようなものもうちには残っている。いつでも会社のことや仲間のことを考えてくれている、そんな正社員集団なのですが、そこへ準社員が入ってくるとどんな雰囲気になってしまうのか心配なんです。」
「体の割には心配性なんですね(笑)」
さてこの話、あなたはどのように受け止められただろうか?
私はこう思う。
まず一つは、社長と社員の信頼関係を作ったものは何だったのかを良く知るべきだ、ということだ。決して金銭だけではないはずだ。もちろん極端に給料が低いとか、遅払いの連続などの問題があれば別の話だが、常識的な範疇であれば、金銭問題は二の次だ。
金銭でないとすれば他の何なのか。理念か?夢か?ビジョンか?
私はそのいずれでもないと思う。
<つづきは明日>