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恥を知る

●「恥を知れ!」という言葉は『言志四録』(佐藤一斎著)が由来と思われる。

同著に、【立志の功は、恥を知るを以て要と為す】(志を立てて実績をあげるには、恥を知ることが肝要である)とあるのだ。

●「恥を知る」とは、人に言えない自分の恥ずかしいことを直視することである。肝心なところで誘惑に負ける心の弱さだったり、安逸をむさぼる悪習間だったり、優しさという名の妥協だったりする。
そうした我が恥が志の足を引っ張っていないかどうかをふり返る必要があろう。

●また、「恥を知る」とは、心の問題だけとはかぎらない。
技術や知識の欠如によってどうあがいてみても目標を達成できるレベルに達していないことも大切な「恥」である。

●究極の恥は、自分中心に人生を考えて真の志を立てないことかもしれない。これで充分です、と現状に満足して何も挑戦しない生き方は事業家として恥だろう。

●東洋思想家の安岡正篤氏は、秋のはじまりにこんな詩を作った。

【新秋清警】(しんしゅう せいけい)

一.新秋なり。暑中の惰気を一掃し、颯爽として清健の気を振起すべし。
一.読書の好季なり。早暁・深夜、古教・心を照し、心・古教を照すべし。
一.日新の世界なり。活眼を宇宙に放って、気宇・識見を遠大にすべし。
一.日本の危機なり。匹夫・責あるを知って、祖国と同胞の為に尽瘁(じんすい)すべし。

※安岡正篤『人生信條』 致知出版社 より

●この詩を私なりに解釈すればこうなる。

一.いよいよ秋が始まった。夏に緩んだ気分を一掃し、再び新鮮な気持ちでやる気を奮い起こすべし。
一.秋は読書に最適な時期である。早朝や深夜に古典名著に接し、心を耕すべし。
一.秋は旧来の悪習を絶ち、新しい人生をもう一度始めるのに最高の時期である。そのためにも、しっかり目を見ひらいて大きなスケールで自分と世界を見つめな
おすべきである。
一.今は日本の危機である。国民ひとりひとりが国に対する責任と自覚をもって、おのおのの立場で奮励努力すべし。

●この秋、恥を知ろう。
そして恥が志のさまたげになっていたら、それを取りのぞく工夫をしよう。