●昨夜のNHK「サンデースポーツ」で特集された世界柔道48kg級の覇者福見友子選手(24)は、毎日が柔道。人生も柔道、彼女自身が柔道のようだった。
小学校二年から柔道を始め、高校二年で同じ階級の壁だった谷亮子選手に勝った。「谷に勝った高校生」として注目を集めたが、その後スランプに陥る。そこから復活して北京五輪選考会で再び谷選手に勝つが、実績に勝る谷選手に五輪代表の座を譲ることになる。
(谷選手は北京五輪で銅メダル)
●そこから再び実力で勝ち取った柔道世界選手権2009での金メダル。
テレビでは練習漬けの福見選手が久しぶりのオフで表参道で買い物したり、スィーツを楽しむ場面が映った。
カメラに向かって「普通の女の子みたいですね」と笑う彼女。それは、普通の24才とは違うことを自覚している証拠だ。
お店でユニークな体重計を見つけたら、「これって柔道家には必須のアイテムですよね」と言うし、オシャレなハンガーを見たら「これに柔道着をぶらさげても合わないでしょうね」と笑う。オフでも頭の中は柔道しかない様子だ。
●アメリカの心理学者が、「あなたは、あなたが一日中考えていること、そのものだ」と言っているが、福見選手を見ていたら、たしかにその通りだと思える。
●そんなことを考えながら今朝、スターバックスへの道を歩いていると、ひとりの老紳士とすれ違った。
「あれ、見覚えがあるなぁ。誰だっけ?あ、そうだ。歯医者のK先生だ」と思い出し、軽く会釈したら先方もこちらに気づいたようでニコヤカな表情を作られた。そのまますれ違おうとしたら、先生がこちらに歩み寄り、こう切り出された。
●「おはようございます。ところでその後、炎症の具合はどうですか。右前のこのあたりの箇所(自分の歯を指しながら)をかなり奥までつっこんで治療したので、腫れと痛みが心配だったのですが・・」
“え~、そこまで覚えてるのですか?”と内心で舌を巻きつつも私は、「ええ、まったく大丈夫でした。今日も予約を入れてありますので、またお願いします」と言うと、「どうぞ、お待ちしてますから」とK先生は笑いながら立ち去って行かれた。
●私はこのK先生に、まだ三回しかお世話になっていない。
にも関わらず、路上ですれ違う私の顔を思い出し、治療の内容まで瞬時に思い出すとはすごい。
先生の記憶力に感心し、同時に、自分の記憶力はどうなのだろう?と反省しながらスターバックスに着いた。
●「本日のコーヒーと、このサンドイッチ」と注文する私。アルバイトらしき若い女性店員が私にこう確認した。
「若干ですけれども、トマトが入っていますが大丈夫ですか?」
「えっ、トマトが?じゃあそれとは別のサンドにします。でも、それより僕がトマト嫌いだとなぜ分かったの?」
「前にそうおっしゃってましたから」
●前にスタバでサンドを買ったのは少なくとも三カ月前のこと。それを記憶のデータベースに入れている二十歳そこそこの女性がいることが驚異だった。
●「あなたは、あなたが一日中考えていること、そのものだ」と言うが、何のことを一番多く考えているかが問題だ。
いつも考えていることが、あなたにとって価値あるものであれば良い。
できれば関心をあれこれ分散させず、一個に絞り込もう。そうすれば、一日中そのことだけを考えられるようになる。
考えていることそのものを上手にコントロールすれば、誰だって福見選手にも歯医者のK先生にもスタバの女性店員にもなれる。