●「もうひとつの甲子園」と呼ばれるものが幾つかあるが、飲食業界注目のイベントが「居酒屋甲子園」。
今年も1000店を超える居酒屋が日本一の栄光をめざして参加し、一次予選・二次予選を勝ち抜いた6店が8月19日(水)の決勝大会に進出した。
そして今年、見事優勝したのは愛知県刈谷市の「創作和洋ダイニングOHANA 刈谷店」だった。
★居酒屋甲子園
http://gourmet.feature.yahoo.co.jp/izako0903/index.html
●高校野球も愛知県だったので甲子園ダブル優勝ということになる。
今年の決勝大会を見学したA社長に感想を聞いてみたところ、ちょっと意外な話が聞けたので、そのやりとりを再現してみたい。
武沢:今年も横浜での決勝戦をご覧になったそうですね
A:ええ、私も飲食店を経営しているので、このイベントは毎年注目しています。
武沢:今年の印象はいかがでしたか?
A:いやもう、それはすごいパワーでいつも元気と感動をもらえるのですが、今年は、去年までの流れとはちょっと変わってきたように感じました。
武沢:ほぉ、流れが変わった?
A:ええ。去年まではとにかくエンジン全開で社員やお客様に元気と感動を振りまいているお店が強かったのですが、今年はどちらかというと仕事のたしかさとか、さりげない心配りが出来るとかの自然体に近いサービスが評価されていたように思います。
武沢:へぇ、そうなんですか。それは感動が減ってしまったという意味ですか?
A:いえ、減ったとか増えたとかの問題ではないと思います。他人に感動してもらうことを目的にするのでなく、自分たちがすべきことをしているお店が評価されたという意味です。
武沢:「まず始めに感動ありき」ではないわけですね。興味深いですねえ、それは。
●サービスの「原点回帰」が始まっているらしい。
そんな話題を昨夜、マンダラ手帳の松村先生にさせてもらったところ、先生はハタと膝を打って「仏教も同じ」というお話しをされた。
松村:武沢さん、原点回帰の現象は仏教界でも起きているのですよ
武沢:えっ、仏教でもトレンドのようなものがあるのですか?
松村:ありますねぇ。ブッダが説いた教えは初期仏教とか根本仏教とか言われるものです。その基本は「縁起」又は「因縁」、「四諦」「八正道」と言われている。
後になってその初期仏教が部派仏教(小乗)になり、やがて大乗仏教という具合に進化していった。何といっても大きな乗り物の大乗ですから、人々を救うために次々に新しい概念を作りあげていくわけです。たとえば、「無」(む)とか「空」(くう)といったものも大乗の人たちが作ったものでして、ブッダがそれを言っている訳ではない。
武沢:ほぉ、そうなんですか。つまり、ブッダの教えが時代とともに変わっていったのですね。
松村:より多くの人を救うための方便のようなものが次々に出来ていったわけですね。たとえば、ブッダ自身が説いた「八正道」(はっしょうどう、真理を悟るための八つの正しい道)は、大乗仏教になると「六波羅蜜」というものになる。
http://ja.wikipedia.org/wiki/八正道
(正見、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定の八つ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/波羅蜜
(布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧の六つ)
武沢:どちらも同じような内容にみえるのですが。
松村:たしかによく似ているし、どちらも立派な教えです。しかし、最初に人に施しをせよと教えている「六波羅蜜」は、誰かを喜ばすための「利他業」や「慈悲業」であるのに対し、「八正道」は、あくまで自分自身のあり方の問題です。それは、真理を悟るために貫く道でもある。
武沢:なるほど、さきほどの「居酒屋甲子園」の話と共通点がありますね。
松村:大いにあります。相手を喜ばせたお店が優勝するのではなく、自分たちがやるべきことをやったお店が優勝するというのは、ビジネスも仏教も原点回帰している証拠ですね。
●私はディズニーランドが好きだが、それはディズニーのアトラクションがよく出来ているのと、いつでもどこでもサービスが均一で安心できるから。
「夢と感動をもらえるからディズニーランドが好き」という人も多いが、私は過剰な演出でつくられた感動エピソードというものがどうにも受け入れられない。それが嫌でディズニーに行かないという友人も何人か知っている。
●それと同じように、レストランや居酒屋も自然体が良い。
「今日は何人のお客を泣かせたか」ということをやり甲斐にしているレストランでは、連日、泣かせてほしい人の予約で一杯だというが、私はそこで食事したいとは思わない。
●行きすぎた利他業、慈悲業はそろそろ卒業して、理念にもとづいたあなたならではの「八正道」を作り、自分自身を磨くことにもっと夢中になろう。