●周の時代を生きた劉峻(りゅうしゅん)という人は他人とよく絶交した。彼が残した論文『広絶交論』によれば、人と人の交わりを大きく二つに大別している。
そのひとつが「素交」(そこう)、素の交わりのこと。
もうひとつが「俗交」(ぞっこう)、相手から何らかの利益を期待した交わりのこと。
この二つだそうだ。
●そして作者は、「俗交」の相手とはことごとく絶交していったわけだが、「俗交」にも五種類あるという。
・「勢交」(せいこう)、相手の勢いに乗じようという交わり
・「賄交」(わいこう)、儲かる相手とつき合う、あるいは金を出させる交わり
・「談交」(だんこう)、影響力をもった人と交わって、こちらも知名度を上げようという交わり
・「量交」(りょうこう)、相手の景気次第であっちへ付いたりこっちへ付いたり、はかりにかけるような交わり
・「窮交」(きゅうこう)首が回らなくなり、あそこへ行けば助けてもらえるだろうという交わり
●なかなか良くできた論文だと思う。
たしかに「俗交」の相手とは酒を飲んでいても心から楽しめないが、「素交」の友とはとことん飲めるし語り合うことができる。
私はさらに、「素交」の中に、もう一段高いレベルの交際があると思う。それは「同志」とか「盟友」などの次元の友である。
●昨年、創刊30周年を迎えた月刊『致知』の致知出版社。
その記念式典で京セラの稲盛和夫名誉会長が、「致知を読む者は皆、ソウルメイトだ」と祝辞を述べ、場内から万雷の拍手がわきおこった。
私もホテルオークラのその会場にいた1,300人の一人として熱い拍手を送っていた。
稲盛さんが語る「ソウルメイト」(魂の友人)も高次元の「素交」といえるものだろう。
●月刊『致知』は、”人間学を学ぶ”ことを目的とした月刊誌である。
生涯を通して学習し、覚醒し、自分を高めていくことに関心がある人が『致知』を読む。
新幹線や飛行機で『致知』を手にした人がいれば、つい話しかけたくなるのも不思議ではない。
●「社員教育が進まない」という経営者は、社員と「俗交」を期待しているからではないか。
『致知』を読んで奮起せぬ人はいないが、それを社員と定期的に輪読し、お互いに奮起を共有しよう。
●社長と社員が輪読会を通して「素交」の関係を作っていくことができれば、社員は必然的に育っていく。
そんな社員が何人も何人も育ってきたら、会社の中は人材の林や森のようになって固有のオーラを発するようになるだろう。
それが目指すべき「社風」というものである。
●そのように考えれば、社員教育を始めることはむずかしくなんかない。
『致知』の輪読会をやって感想を述べ合えばそれで立派な人材育成である。無理に社長が何かを解説したり補足する必要はない。ひたすら輪読すればよい。
すでに『致知』を読んでいるあなたとは、ソウルメイトだ。
まだお読みになっていない方は、『致知』を定期購読しよう。
最新9月号は、『一書の恩徳、萬玉に勝る』という読書がテーマの特集なので、是非、それを入手してほしいと思う。
★月刊『致知』 http://www.chichi.co.jp/outline.html