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アートを感じたければ

●直島は島全体がアートだ、といえば言いすぎだろうか。でもそう言えるような勢いでアート化が進んでいることは間違いない。

銭湯の風呂場の中に巨大な象のモニュメントがある。浴槽の奥にはズラリとサボテンの鉢植えが並び、壁画は富士山なんかじゃない。インドの童話にでてきそうな少年と象の不思議な絵。

いや、そもそもその前に、ここに来た人はまず建物の外観に度肝を抜かれ、ほぼ100%の確率で記念写真を撮っていく。

●先月末、なんとも“アート”な銭湯が誕生した。

芸術家・大竹伸朗氏による直島銭湯「Iラブ湯」という。入浴料500円(島民300円)という立派な値段ながら、話のネタに続々と旅行者が入っていく。もちろん、私も入った。
http://www.excite.co.jp/ism/concierge/rid_7586/

●瀬戸内に浮かぶ直島。直島町(なおしまちょう)は香川県香川郡に属する町で、瀬戸内海上に浮かぶ直島を中心とした直島諸島の島々で構成されている。人口約3400人ながら、昨年の年間観光客数はなんと30万人を突破したときく。外国人観光客も非常に多く、我々が泊まった小さな民宿にもフランス人の親子三人が宿泊していた。

●1985年、「直島を人が集まる島として再開発したい」と願う当時の町長と、「瀬戸内に世界中から子ども達が集まれる島をつくりたい」と願っていた福武書店の創業者の思いがつながって開発が始まった。
試験的に福武書店(現・ベネッセコーポレーション)の社員と子ども達のキャンプ場として開発が始まり、1989年からは監修者に安藤忠雄氏を招いて一般開放もはじまった。

●それ以前の直島は三菱マテリアル製錬所関連の重工業とハマチや海苔の養殖漁業が中心のひっそりとして島だった。
製錬所から排出される煙害により島の北部周辺の木々は枯れ、周辺の山々が禿げ山化するという被害が発生するなど、島の環境は大きな影響を受けた。税収確保と自然保護のバランス取りで苦慮していたわけだ。

●今、直島はキャンプやマリンレジャーだけでなく「アートの島」として世界的に知名度が高い。
外国人にとって一度は行ってみたい場所のランキングで直島は世界の10指に入るとも聞いたことがある。
それはベネッセの発信力と同時に、建築家・安藤忠雄氏デザインによる「地中美術館」や「家プロジェクト」の人気に負うところも大だろう。

●今回我々が行った「地中美術館」は週末ともなれば2時間待ち、3時間待ちにもなる。
アートの見せ方としてこれほどアートを感じる建築物は見たことがない。壁も床も照明も階段も、トイレまでもがアートだ。それは、あなたが今想像しているアートとはたぶん別物だ。

●安藤忠雄というデザイナーのイマジネーションの豊かさとそれを形にまとめあげる設計士としての実力をまざまざと見せつけられた思いがした。いたるところで「やられたぁ」と、妙にうれしい思いがした。

●今回の直島旅行を企画してくれた知人はヨットと直島が大好きだという。岡山からも高松からもちょうど1時間で来られるので、週末旅行はもちろんのこと、日帰りで島を楽しむこともしばしばとか。

●島が便利だったらおかしいが、島全体が観光地化されるのを相当制限しているようで、相当不便だ。コンビニがない。観光ガイドブックのたぐいも少なく、晩ご飯をどこで食べるのか情報不足に困惑し、結局サンドイッチとオムライスとドイツビールで済ませてしまった。
美味い魚を食べたかったら高松か岡山が良いだろう。

●ただ、我々は裏ルートをたどった。それは島民や船頭さんと仲よくなったことだ。彼らに個人的にお願いし、キスやアナゴ、ふぐを釣った。釣ったばかりの魚を船上で刺身にしたり、塩こしょう、わさび醤油でバーベキューにして食した。
船頭さんが前もって用意しておいてくれたサザエを壺焼きにし、牛肉の塊をザクザク切ってレアにやいて醤油をたらしてガツガツ喰う。ビールのホップと潮騒の香りとが口中でブレンドされて、首につかるまで美味いものを食らった。

直島は相当フトコロが深そうだ。今度は最低二泊で行ってあの船頭さんに働いてもらおう。

★直島 http://www.naoshima-is.co.jp/