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龍(りゅう)とエビ

古い文庫本を手に取ったら、中に挟んであった紙ナプキンが落ちた。拾いあげると、何かメモが書いてある。間違いなく私の文字で、こう書かれていた。

「龍は川に落ちてエビにいじめられる」

どこかのレストランか酒場のものと思われるナプキン。いつ、どなたから聞いたのかまったく思い出せない。どなたか心当たりがある方は出典などをお教え願いたい。

龍とエビ、誰が考えても龍の方が強い。なにしろ天を舞い、雲を割くのだから。しかし、龍も川に落ちてしまったらエビどもにやられてしまうことがあるのだろう。

「龍は川に落ちてエビにいじめられる」

川エビは中華料理でよく使われるから、これはきっと中国の故事であろう。なかなか含蓄がある。それによく似たものに『史記』のこんな言葉がある。

「燕雀(えんじゃく)いずくんぞ鴻鵠(こうこく)の志(こころざし)を知らんや」

ツバメやスズメのような小さな鳥には、オオトリやコウノトリのような大きな鳥の志すところは理解できない。小人物には大人物の考えや志がわからない、というたとえで使われる。

・私は龍だろうかエビだろうか。今の主戦場は空なのか川なのか。
・私は鴻鵠か燕雀のいずれだろう。

ときにはそんな問いかけを自らにしてみよう。