●入社式ラッシュを迎えている。
かつての日本は、今よりずっと”会社人間”が多かったから、新入社員向けの社長訓辞で「会社のために仕事をするな。自分のために仕事せよ」とか、「社長や上司のイエスマンになるな」と教えることが多かった。
それぐらい突き放してちょうど良いくらい会社に対するロイヤリティが高かったように思う。
●今はそんなことを言われなくても新入社員は分かっている。
会社のためというより自分のために仕事をするし、イエスマンになりたくてもなれない人が多いようだ。
むしろ「若いうちは自分を押し殺してでも上司の “イエスマン” になれ」と今の人に言ってあげたいほどである。
●そうした中、そのものずばりのタイトルに惹かれて昨日観てきた映画が「イエスマン」(ジム・キャリー主演)。
この映画を見終わって一歩外に出たら、今日はすべて「イエス」で行こう!と思っている自分がいた。
だが、実際にはその後すぐに入った回転寿司店で男性職人の態度の悪さに責任者を呼んで「NO」を突きつけたが、ここではそれは無関係。
●映画「イエスマン」の原作は、英国ユーモア作家の実体験を元にした小説だ。
私たちは誰かに何かを誘われたり、勧められたり、頼まれたり、決断を迫られたりすると「是々非々」(イエスはイエス、ノーはノー)で判断する。
ところが、イエスとノーの比率を見てみると、人によって必ず偏りがあるはずだ。いつもとっさに「NO」を言うとどうなるのか・・・。
以下、ネタバレ含む。
●主人公のカール(ジム・キャリー)は、面倒くさいから電話には出ない。
友人の誘いも口実をつけて断って、自宅に帰って一人DVDを観る。勤務先の銀行(融資窓口)でもローン審査にはほとんど「却下」を下す。
いわゆる典型的な「ノーマン」だった。
●そんなカールゆえ、妻には逃げられ、友人も離れ、出世競争にも敗れていく。
そんな自分を変えようと、ある日、自己啓発セミナーに出てみることにした。
そのセミナーに集まっていた人たちは、皆「YES!YES!」と熱狂的に連呼する新興宗教のような雰囲気のセミナーだった。
カールは最初ひどく違和感を感じたが、カリスマ主催者から脅しに近い言いつけをされ、「イエスマン」になる決心をした。
●その後のカールは、
勧誘されたライブに出向いて新しいフィアンセと出会い、クビ寸前だった銀行では重役に出世し、ギターと韓国語を習い、オートバイを運転し、身投げ男性を助け出し、まるで別の人の人生のように人生が大逆転していく。
おまけに同じアパートのおばあちゃまにまでベッドに誘われ・・・、詳しくは映画に譲るとして、「摩天楼はバラ色に」(マイケル・J・フォックス)をほうふつさせる痛快成功コメディで楽しかった。
●予の辞書に「不可能」の文字はないと言ったナポレオン。
もし、「NO」の文字を辞書から削るとどうなるか、新入社員の若者はもちろんのこと、人を育てる立場の人たちにも観てほしい作品だ。
●「どうも我ながら最近”NO”が多いな」とお感じのあなた、せめてこの映画を観たその日だけでも「イエスマン」になってみてはいかがだろう。
「スーパーマン」や「スパイダーマン」のような大活躍をする「イエスマン」になっているかもしれない。
★イエスマン http://wwws.warnerbros.co.jp/yesman/main_site/
たくさん出でよ、イエスマン!