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大福餅の飛込み営業

●甘いもの、とくに和菓子が大好きな私は、出張のたびに各地の銘菓をみやげに買う。家族全員が甘いもの嫌いなので、結局わたしが全部食べることになる。

●東北へ行けば福島・柏屋の「薄皮饅頭」は欠かせないし、新潟に行けば越後銘菓「笹だんご」、京都なら出町ふたばの「名代豆餅」、九州なら佐賀の「小城羊羹(おぎようかん)」や長崎・福砂屋の「カステラ」。

そういえば、先日いただいた大阪・喜八洲総本舗の「力士最中」(りきしもなか)や東京日本橋のきんつば(屋号は忘れた) も絶品だった。

最近では、すごい会議の大橋禅太郎さんにもらった群林堂(文京区)の「豆大福」も秀逸の極み。まちがいなく、日本の菓子は世界一だと思う。

●そんな私を狙い撃ちしたのか、昨日、大福餅とカステラの飛び込み営業マンがやってきた。

「コンコン」とノックがあり、営業マンらしき男性が入ってきた。
いつもならスタッフが対応し、30秒ほどで “撃退” してくれるのだが、今回は、スタッフが私に「社長、こんなのを販売に来られました」とチラシを見せた。

●午前中は原稿を書くから誰にも会わない、という私の流儀を知っているはずなのに取り次ぐとは何事かと思いきや、チラシにはみるからに美味そうな大福餅の写真の数々。

一番人気は「うすしお豆大福」だという。
京都大原の名店のお菓子らしい。迷わず6個ほどセット買いして代金を支払った。するとその営業マンは、すかさずこう言った。

「お客様、大福を買われた方限定販売のカステラがこちらです」と、千葉産のカステラをすすめる。

「え、千葉のカステラ?」とためらう私。だが彼は自信たっぷりだ。

「はい、さかえ屋さんのカステラです。第24回全国菓子大博覧会で、大臣栄誉賞を受賞した『手造り生カステラ』です。
生ものですからなかなか名古屋では召しあがる機会が少ない銘菓かと思います」

●「なるほど、じゃあそちらももらおう」と全部で2千円ほどお支払いした。その後、私はちょっと気になって質問した。

「あなたは京都の大福餅屋さんの人なの?それともカステラの方?」

すると彼は首からぶら下げていた名札を私に見せながらこう言った。

「私は名古屋の会社のものです。各地の美味しいモノを見つけてきてはこうしてオフィスにお知らせして回るのが仕事です。また時々、こうしてお邪魔してはおいしいものをご提案させていただきます」

●彼が帰ったあと、さっそく大福餅を食べてみたらたしかに美味い。

オフィスに居ながらにして全国の銘菓が食べられるなんて便利だ。
そこでメルマガ発行の手をしばし休め、彼のビジネスモデルを勝手に試算してみることにした。

●まず彼は、全国各地の人気和洋菓子店に連絡し、仕入れルートを確保する。
肩から提げた保冷バッグの中に大福餅とカステラが入っていた。きっと車の中のクーラーボックスにはもっとたくさん入っているのだろう。

●一軒あたりの客単価は1,000円と仮定しよう。
粗利益率は50%程度だろうが、ロスを引くと40%の400円になるはず。

経費は人件費と交通費、もろもろ入れて一ヶ月で35万円、一日あたり1.4万円程度。それを400円の粗利益でまかなうには、一日35人に売らなければならない。
一日あたり飛び込み件数が70件だとして、クロージング率は50%確保しなければならない。それでようやく月間35万円、年間420万円の粗利益なのだから、収益モデルとしては魅力が乏しい。

●だが、もし仮に私のような「行けば売れる」「会えれば売れる」という安定顧客を次々に確保していくとどうなるだろうか。

あるいは、紹介獲得法や追加注文の方法をシステムに置きかえるなど、特別な技を加味していけば、おもしろいビジネスになる可能性もある。

●あるいは、一般企業が営業社員を鍛えるという意味で、教育訓練の一環としてこうしたビジネスを始めさせることも可能で、そうしたらフランチャイズビジネスにも広がる。

そんなことを考え巡らせていたら、大福餅を完食していた。