●一人12,000円の給付金を配れば景気が回復すると思っている政治家が本当にいるとは思えない。今日の景気や経済はもっと複雑で大規模なものである。
●昔はもっと単純だったのに、どうも最近の不況はよく分からない。
政治家もそのところを分かっていないから有効な手が打てないのだろう。
●物が足りないからどんどん作り、どんどん売れるのが好況。調子に乗って作りすぎたら、逆に物が余りだし仕事がなくなる、それが不況。
長期上昇基調のなかでこれが交互にやってきたわけで、昭和のころまでは比較的単純なメカニズムだったように思う。
●そんな時代は、経営者も2~3年ほどじっと我慢していればやがて好況がやってきて、問題が解決した牧歌的な時代でもあった。
だが今回の世界同時不況は、「米国の住宅ローン債権の世界的流動化とその破綻」という大変分かりづらい原因が発端になっている。
それゆえ、国の景気対策も、銀行や民間企業のダメになった会社に金を注入するしか手がないという。
それでは金がいくらあっても足りないだろう。かといって、国が支援しないと大型倒産の連鎖が世界規模で広がっていき、目もあてられない事態になる。
●金融などには目もくれず、コツコツとまじめにやってきたところにも金融不況の余波が襲っている。
余波というには大きすぎる津波のような波で、売上6割減、7割減という製造業がゴロゴロある。
大手自動車メーカーは2割から4割減産しているだけなのに、その協力企業が6割も7割も減るのは発注の分散化が原因としか思えない。
●いつまで減産すればよいのか、まったく先が読めない状況とは言え、競争力ある商品や技術をもっている会社は防御を固めながらも新しい分野への挑戦をするなどして売上をつくり、事態を打開していこう。
●ところで、国の威信をかけた米国自動車業界。
GMとクライスラーの処理をどうするか、「最後の審判」に世界の注目が集まっている。
「破綻リスク95%」と言われるGMだが、期待の切り札といわれたプラグイン方式の電気自動車「ボルト」は、トヨタのハイブリッド「プリウス」と比べてコストパフォーマンスで大きく劣っていると報じられた。本体価格も高く、燃費も悪いのだ。
仮に米国政府が同社を救ったところで、はたして今後の世界競争に勝ち残れるのかどうか、疑問も残る。希望がもてない限り、無用な延命はかえって傷を深くするのではないかと私は思う。
●好況だろうが不況だろうが、そもそも、もろい基盤の上に成り立っている事業はやがて崩壊する運命にある。
確固とした技術や品質、信用の上に成立している事業ならば好不況の影響を受けてもわずかなものである。
今回のサブプライムローンのように「住宅価格の上昇」などという不確かなものを前提にしている商品は破綻して当然なのである。
●その他、もろい基盤でなりたっている会社とは次のようなものだ。
・社長個人の人脈だけで受注がとれている会社
・法の不備や盲点を突いて成立しているビジネス
・特定企業、特定季節の売上が大きすぎる会社
などなど、特定の何かが強すぎる反動として、バランスが悪くなる。
それを是正していくことによって、企業はどんどん強くなる。
●また、こんな時になっても動じない財務体質を確保していきたい。
そのためには、企業は日頃から高収益体質でなければならない。高品質な製品・サービスを適正価格で販売し、適正利益を上げつづけることが大前提である。
毎年納税をきっちり行い、税引き利益を内部蓄積し、資本(純資産)を年々増強し、自己資本比率を高めていこう。
●当然キャッシュにも注目し、フリーキャッシュフローが増えていく方策をとろう。
借り入れ依存体質から脱却し、投資家がよだれをたらすような魅力ある経営をしよう。
こうした積み重ねがあなたの会社やあなた個人の不況抵抗力を強めていく。
●好況の時や平和な時代には誰が何をやってもうまくいって当たり前。
こんな乱世に、あなたが何を考え、何を語り、どんな手を打つのか、それがあなたを歴史に名を残す名社長にしていく。今こそ、あなたの正念場である。
明日は、こんな大不況を克服する智恵について先週に続いて松下幸之助さんにご登場願う予定だ。