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夢一と夢二

●初夢建設工業(仮)の初田夢二(44)部長は朝礼開催に反対だった。
なぜなら、去年までやってきた朝礼は本当につまらなかったからだ。

朝の低いテンションのまま事務的な連絡事項のやりとりをするだけでは意味がない。
それに、お互いに朝の仏頂面を確認するのは不愉快で、かえってテンションを落としあっているように思えたからだ。

●ところが最近、兄の初田夢一専務(47)がどこかで「元気朝礼」というものを聞きつけてきたようだ。
兄が入手してきたDVDには、居酒屋の元気朝礼の様子が納められていた。

●兄と一緒にそれを見終わったとき、弟の夢二は信じられないものをみた気分だった。
元気いっぱいに自分の考えや夢を述べる若者。そのしっかりした話しぶりに、「本当にうちのスタッフと同世代の若者なのか」と驚いてしまった。

●プレイヤーからDVDを取り出しながら、「ふ~、すげぇ」という言葉が自然に出た。
間髪入れずに兄は、「夢二、うちでもこれをやろう!」と言いだした。

だが夢二は渋った。

「それはどうかなぁ、あのDVDの会社は客商売だろ。うちは材料相手、図面相手、職人相手の仕事なんだから朝礼なんか必要ない。現場単位で朝礼も体操もやるし、みっちり行程打ち合わせなんかもやるんだから、それだけで充分じゃないの」

「いや夢二、連絡事項だけならそれでいいかもしれんが、朝礼は社員教育にもなるんだぜ。うちは教育が後れていることはお前も認めるだろ」

「それは認めるけど社員教育が目的なら朝礼にこだわる必要はないと思うよ、兄貴。それに朝からあんまりやる気満々になって、もし現場で手元足下でも狂ったらどうする。現場はどこも安全第一なんだから、むしろ低めのテンションで慎重に仕事をしてもらったほうがいいに決まってる」

●「そうかなぁ・・・」、兄は黙った。

実は夢一にはいくつか頭痛のタネがあった。「元気朝礼」に関心をもったのも、その頭痛対策からだった。

ひとつは、社員の遅刻である。

さすがに朝の現場に遅れるようなことは滅多にないが、社内の会議やミーティングが定刻通りに始まることはなかった。
日報や提出書類も締め切りに全員が揃うことは一度もなかったし、夢二部長自身が一番ルーズだった。
このままでは、企業としての初夢建設工業が次のステップへ進めないと専務は考えていた。

●もうひとつの悩みは、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)がまったくないことだった。
職人肌の社員が多く、互いに声をかけ合い、助け合うという気持ちがあまりないようだった。なによりも夢二部長が一番職人肌で、客先でも評判が悪かった。施主ときちんとした会話ができないし、あいさつすらせずに施主の元から帰ってくることもあった。

「あの人が専務の弟だなんて信じられない」と言われたこともあった。

だから全員が毎朝揃って意味ある朝礼をやることは専務として大切なテーマだと思っていた。それに、兄として弟を管理者らしく育てることは亡き父に託された悲願でもあった。

●結局、その日の兄弟会議はモノ別れに終わった。

二日後の夜、夢一専務と夢二部長はあるメルマガ作家が開いている経営勉強会に参加した。
気むずかしい夢二部長も、この作者が書いているメルマガ『がんばれ社長!今日のポイント』だけは欠かさず読んでいた。
兄にこのメルマガのことを教えたのも弟だった。

その勉強会の二次会で朝礼について相談したところ、このメルマガ作者は二人にまったく別の知恵をさずけてくれた。

その知恵を聞くと、兄弟そろって「その朝礼おもしろい、是非やりましょう!」と言った。

いったいこのメルマガ作家は二人に何を教えたのだろうか。

<明日につづく>

※この話は最近あった複数の実話をミックスして、ご本人たちが激怒しないようアレンジして書いています。
どうか激怒されないよう祈っています。