●「最悪のシナリオが現実のものとなっている」
とゴーン社長の日産自動車では、業績見通しの大幅下方修正と2万人の人員削減を発表した。
今朝の新聞・テレビでは、そのニュースを大々的に報じた。その一方で株式市場は冷静に受け止めているようで、今日の前場はむしろ19円高の280円で引けている。
●「2万人削減」の発表内容をよく見ると、割合穏当な手術のようでもある。
2万人のうちの6割にあたる1.2万人が国内、残りが国外での削減とあるが、希望退職を募ることや工場閉鎖などはせず、採用の抑制と定年退職や通常退職の自然減によるものだという。
だから、町に失業者が一気に増えるというものではない。
●「失業」といえば、大手製造業が行っている「派遣切り」が問題になっている。
派遣社員を切った企業が悪者で、切られて失業した人たちが被害者扱いされているが、切った側の企業だって何も悪いことをしているわけではないと思うのだ。
●ルール通り、契約通りに履行しているに過ぎない。仮に契約を反故にする場合でも契約どおりに違約金などを支払っている。
だから何も悪くない。
こうした問題が起きたのは、法律やルールに落ち度があったわけだから、今後すみやかに変えてゆけばよい。
●むしろ私は、失業することになった責任の半分は失業者本人にあるということを誰も言わないのが不思議に感じる。
「自分株式会社」の社長として自分のマネジメントに失敗したから失業するのだ。
仕事がない、お金がないという苦しみや辛さは大変お気の毒なことだし、保護してあげるべきだと思うが、そうなった責任をだれかに押しつけることはできないのだ。
それが資本主義や民主主義の基本原則なのだから。
政治の責任は問われることがあっても、派遣を切った経営者の責任ではない。
●失業した責任の半分は自分自身なのだから、被害者根性をきっぱり捨ててほしい。マスコミも彼らを被害者扱いにするのはやめてほしい。
失業してしまった人たちは、新しい知識や技術を習得し、有効求人倍率の高い分野に転身して自分の売り込みを計ろうではないか。
●国や地方行政それに民間は、失業者をお金で保護するだけでなく、彼らの転職を可能にするための教育訓練や人生目標の設定支援などで彼らの自立を促すべきだろう。
●「失業の責任の半分は本人」だとしたら、残り半分は誰の責任かというと、今まで彼らが働いてきた会社の社長であると言いたい。
派遣社員になる前に働いていた会社の社長のことだ。
社員教育をきちんとやってくれる会社であれば、どこにも行き先がないという社員を作ることはなかったはずだ。
だから、失業者を作ったのは、彼らの前職の社長だと考えられなくもない。
●「長年はたらいた勤務先が倒産してしまった」というような場合でも、ちゃんと社員教育されていればすぐに転職できる。むしろ同業他社からオファーがくることも珍しくないのである。
だから、明日の失業者を作らないようにする責任は社長にあるのだ。
●「経営者は雇用を守れ」と識者はカンタンに言うが、そんなことは言われなくてもそうしたいと大半の社長は思っている。
だが、「雇用を守っていたら、企業が守れない」という会社もたくさんあるのが現実だ。そんな会社は、勇気をもって雇用よりも企業を守ってほしいと申し上げたい。
もちろん、安易な解雇は許されない。ギリギリまで粘ってほしいので、順序としてやるべき手順を書いてみよう。
1.助成金の勉強
雇用調整のための助成金が出ている。我が社に該当するかどうかも含めて厚労省のホームページで調べるか、社労士さんに相談しよう。
→ http://www.mhlw.go.jp/general/seido/josei/kyufukin/index.html
2.役員報酬のカット
業績責任をまっさきに追うべきは経営陣である。今月からさっそく社長の報酬は生活できるぎりぎりまで大幅カット。他の役員の報酬も社長に準じて行う。
3.正社員やパートアルバイトの賞与支給ストップまたは大幅カット
夏の賞与、冬の賞与がゼロ円、またはゼロ程度のものになる見通しを今から発表しておく。春の昇給についても同様に凍結する。
ただし、業績目標の達成状況に応じて、昨年並みあるいは昨年以上に支払うことも可能であることも示しておく。
4.給与や時間給、手当などの削減
賞与の次は給与カット。辛いが、雇用を守るためには正社員やパートアルバイトの給与カットに踏み切るのだ。
残業が恒常化している会社は残業代を払わずに済むように定時で仕事を終える体制にする。
仕事が少ない場合は、早退や半日勤務、自宅待機などを組み合わせて、勤務時間を減らすことで給料を下げる。
いわゆるワークシェアリング。
必要によっては賃金体系を見直し、モデル賃金のベースを下げるか、本人の資格等級を下げる。
こうした作業は雇用契約の変更でもあり、充分に法律も押さえるべきなので、社労士などの専門家と相談しながら行う。
社労士によって考え方も違うので、あなたが納得できる人を見つけよう。
5.部門、営業所の閉鎖と人員削減
それでも業績改善が不十分なのであれば、非常手段を発動しなければならない。人員削減である。
かねてから問題のあった社員をどさくさで解雇するのは不当解雇になりかねない。むしろ、企業の現状に鑑みて一部の部門や営業所、店舗などを丸ごと閉鎖す
るかたちで該当者は全員解雇し、一部の人だけ再雇用するスタイルがよい。
実際に問題社員がいる場合は、企業業績に関係なく解雇すべきなのでそれはそちらのルートでやる。
●以上が手の打ち方の手順である。いつ手を打ち始め、どの程度の速やかさでそれをやるかはあなたの判断である。
こうした非常時の考え方としては、今月の業績が悪いことは社長の責任ではないが、半年後の業績は100%社長の責任である、ということだ。