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世界中がおかしいが・・

●昨日香港入りした。空港にお出迎えいただいたのは、二人の紳士。
ひとりは筒井修氏(和僑会会長)で、もうひとりは、香港での大成功実業家S氏。お二人の個人資産を合計すれば(推定)150億円。
大変恐縮してしまったが、私が持っていたふたつのカバンをこのお二方にもっていただいたので、一個平均75億円となる。

●S氏は中国で作った日本の伝統工芸品を世界40カ国に輸出して財をなし、利益を香港不動産に投資して財を一気にふくらました立志伝中の人物。香港で知らない人はいない。

そんなS氏のベンツスポーツカー(型番は知らない)で市内入りし、和僑会の面々が待つビジネスセンターに駆けつけた。

●和僑会とは数年前にメルマガ読者会「非凡会」に集まったメンバーが核となって現地で独自に発展させてきた日本人起業者の異業種交流会。最近は香港人や台湾人、中国人などもオブザーブメンバーに加わっているようだ。

●そんな和僑会の筒井会長のあいさつのあと、集まったメンバーから我が業界の現状を語っていただいた。
ひとことでいうと、香港も大変大変きびしい。

異国で起業している若者ばかりなので、不景気を嘆くような人はいなかったが、笑顔で語る我が業界の惨状は、それぞれ目を覆いたくなるものばかり。

●中国ビジネス25年のTさんは語る。

リサイクルプラスチックの相場が過去にいちども経験したことのないほど下落した。リーマンショックがあった9月ころは、まだショックが対岸の火事程度のものだったが、10月下旬からの約一ヶ月は大津波が襲ってきたように相場が下がり、注文のキャンセルが相次ぎ、廃プラビジネスをやっている同業者の7割が倒産または廃業した。

数人規模でやっているビジネスで月間で億単位の損失が出ては、やっていける方が少数派だという。幸いTさんの会社は無借金なので持ちこたえているが借金をしているところは、銀行の貸しはがしがきつく、立ちゆかなくなっている。

●ベンツで送っていただいた伝統工芸品の輸出販売のSさんの会社にも猛烈な逆風が吹いているという。

フランスやイギリスなどのヨーロッパ諸国に販売した分はコンテナにはいったまま現地で受け取られることがなく、それが世界で何百本分も貯まっている。
作っても売れないから作るのを止めねば。でも炉を止めるのは大変な意志決定。

●いつもなら従業員(1500人)に年末年始休暇を2~3週間与えるが、今年は8週間にするという。しかも、「返ってこなくてもよい」と通知する社員は全体の3割にものぼる予定だという。つまり400人以上のリストラだ。
間違いなく日本のソニーや自動車業界のリストラ報道もこちらで多大な影響を与えている。
和僑会のメンバーは日経新聞を読むのはもちろんとして、ヨーロッパやアメリカの経済誌もしっかり読んでいる。テレビも中国語の他に英語で欧米からのニュースががんがん流れているので、ここにいると、世界の動向に敏感にならざるを得ない。

●求人ビジネスのMさんの会社も一気に冷え込んだ。いままでと同じやり方では生き残っていけないので、営業法を変えて新しい受注法を作り出そうとしている。
いままでなら香港・華南地区で50人の社員を集めようと求人しても、合格ラインに残るのはせいぜい10人。要するに慢性的求人難が続いていた。ところが今なら10人の募集に対してすぐに100人集まる。

しかもよりどりみどり。
今までなら30万円/月は用意しないと来てくれなかった高学歴のバイリンガル・トリリンガル人材が20万円強で採れてしまう。
「だったらうちも募集してみよう」というマーケットが出来はじめているというのだ。

●節税や高利回りで保険を売ってきたセールスレディにもアゲインストの風は容赦なく吹く。
いままでと同じ売り方では、アポすらとれない。そこで、「秋まではりんごとみかんを売ってきたが、この冬からはメロンとパイナップルを売る」とHさん。
元本保証で確定利回りχ%というような保険商品があるので、堅実な投資としての保険の魅力を訴えていく作戦に切り替えて現状を打開していこうとしている。

●環境問題の機器をつくっているAさんの会社ではエコカーのバッテリーを扱っている。この分野は「環境関連」という大きなトレンドに乗っていて、市場はまだ伸びている。今回の不況の影響はほとんど感じていないという。

●赤ちゃん用品の通販商材を中国で製造し、日本に販売しているA社では、低価格品の需要が急増しているので、むしろ売り上げは伸びている。
それに元気を出したいのだろうか、いままで副次的に扱ってきた男性用精力剤が日本相手に伸びているという。

●中国本土の状況はこれよりもう一段も二段もひどい。未確認ながら東莞(とんがん。広州とシンセンの中間にある物づくりの大都市)には1000万人ほどの人口があるが、そのうちすでに80万人は失業しているという。

金儲けを夢見て各地から広東省にあつまってきた小規模ビジネスの多くが失敗し、倒産手続きもできないまま夜逃げしている。これは、広東省だけのことではなく、市場経済の発展ぶりを当て込んで都会にやってきて挑戦した多くの中国人経営者へのきびしいフィードバックだ。

●そんななかでも、経営者はなげいてなんかいられない。生き残りをかけて成長の絵を描いていくのが経営者の仕事。
百年に一度のピンチを千年に一度のチャンス(別名・「千載一遇」)に切り返すための討議が今夜ある。

夜の「香港貿易発展局」の勉強会に参加するが、香港でがんばる起業家や経営者が今、どのような手を打とうとしているのか、私も興味津々だ。