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はじめに目標ありき


●先週、岐阜県の可児市で「5年で売上2倍、利益4倍を達成する方法」というテーマで講演した。
その冒頭で私は、まずこんな結論を申し上げた。

「売上を2倍、利益を4倍にしたければ、そうなるような目標と計画を作って下さい。今日はそのための書式を持ってきましたから、その作り方と達成の仕方を二時間で勉強します」

●聖書は「はじめに言葉ありき」だが、経営は「はじめに目標ありき」だと思う。

かくありたいと願う姿を具体的な数字におきかえて目標設定しよう。
5年で2倍や4倍になることに意味があるのではなく、そのプロセスや結果から得られる様々な恩恵のほうに意味がある。

●例えば、ふんだんな資金が持てるようになることも大きな成果だろう。
「年商に匹敵する現預金をもとう」と各地で申し上げている。現預金に投資有価証券を加えても良い。

その金額が年商に匹敵する会社は、世間全体のざっと3%というところだろうか。
年商の半分(つまり6ヶ月分の売上高)の現預金と有価証券を持っている会社はやや多くなって全体の10%という印象。

●たとえば京セラは連結売上高が1兆3,000億円あるのに対し、現預金と短期投資の合計が6,000億円ある。ざっと6ヶ月分の月商となる。
→ http://www.kyocera.co.jp/ir/pdf/54houkoku.pdf

●船井総合研究所の36期決算(平成17年度)を見てみると、年商がざっと86億円、現預金と投資有価証券があわせて40億円ということで、これまた、ざっと6ヶ月分になる。
→ http://www.funaisoken.co.jp/ir/pdf/060325_taisyaku.pdf

●エイベックス・グループ・ホールディングスの場合、連結売上が約1,000億円あるのに対し、現預金の合計は約100億円となり、月商の1.2ヶ月分ということになる。
→ http://www.avex.co.jp/j_site/tansin/pdf/080619_c.pdf

●「月商の何ヶ月分の現預金があるか」というのは目安の一つに過ぎないが、何らかのこうした基準値を持っておくと目標設定しやすい。

今手元に詳細なデータがあるわけではないが、中小企業の場合は、月商の1~2ヶ月分という会社が多いように思う。
もしその程度だとしても、がっかりする必要はないので今後、計画的に改善していこう。

●「借金してくれば、すぐに現預金が増えるではないか」とお思いかも知れない。たしかにその通りだが、その結果財務の数字が著しく悪化するようでは意味がない。

たとえば、借金したあとでも自己資本比率が30%以上をキープしているのであれば借り入れを検討してもよいだろう。
また、借入金の総額が月商の3ヶ月程度までならOKだが、6ヶ月を超えるとNGである。

●昨夜、愛知中小企業家同友会のなかで講座をひらいた。集まってくれた20社のなかで、すごい財務の会社があった。
年商に匹敵する現預金をもっている会社が一社あったのだ。それ以外に、6ヶ月分という会社も二社あった。

「トップ本来の仕事は今日とは違う明日を創りだすこである」とドラッカー教授が語るように、偶然の結果で好財務になったという企業は一社もない。
今、内容がしっかりした会社は、過去において経営者が強くそれを思い願った産物に他ならないのだ。