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金のなる木

●「武沢くん、もっとしっかり稼ぎなさい」という意味だろうが、ある社長から「金のなる木」の鉢植えを贈っていただいた。

茎の間に5円玉を挟むと、本当にお金がなっているように見えるので、そう呼ばれるようになったらしい。
だが、私の育て方が下手なのか、葉っぱがどんどん落ちてしまう。何とかしないと、このままでは「金が落ちる木」になっていく。

●会社もある意味で「金のなる木」だ。
一ヶ月仕事をしたら、先月より今月の方がお金が増えていた、というようなことを毎月続けるのが会社経営だからだ。
間違っても、会社を「金が落ちる木」にしてはならない。

●会社を食い物にして個人が太ろうと思ってはならないのだ。

ときどき、「税務署とケンカして結局無税を勝ちとった」というような勇ましげな話を聞くが、その多くは、調査官から指摘を受けた経費についても経費として認めさせた、という話が多い。
そんなことはあまり自慢にならないと思う。公私混同を認めさせた、という自慢に等しいからだ。

●先週、三日間の調査を終えて帰られるとき、私は「できれば毎年お越し下さい」と調査官にお願いをした。
多少のジョークと社交辞令もあるが、なかば本気である。税務調査を受けることは社長にとって、とても良いことだと思うのだ。

●社長と経理と税理士という三者の関係だけでは、暗黙のうちの理解ができすぎてしまい、経理処理の方法が甘くなることがある。

もちろんそうならないように税の番人である税理士さんはきびしくチェックするのだが、あいまいな箇所では、あえて社長にケンカをふっかけるようなことはしない。

●特に規模が小さい事業所で経理が社長の奥さんの場合、公私の境目がかぎりなく曖昧になることがある。

「この経費、怪しいなぁ」と税理士は思っていても、それを見て見ぬふりをするときだってあるかもしれない。
だが税務調査の場面では、それが通用しない。だから、調査を受けるたびに社長は襟を正した経営をしていくようになるのだ。

●「給料は少なめでも良いので経費を自由に使いたい」という社長もいるが、それが公私混同のもとになる。給料をしっかりとって、公私のけじめをきちんとすべきだろう。

●会社をどんどん「金のなる木」にしよう。

社長にとっても社員にとっても、会社は活動母体である。その母体が健全な「金のなる木」にならないと困るのは関係者全員なのだ。

●そういうつもりで会社の中をみていくと、結構「金のなる木」の養分を社長や社員が奪ってしまっていることが多いのに気づくだろう。

たとえば予算制度。
予算制度があるのは結構なことだが、「予算があるならそれを使おう」と考えるのは誤りだ。その予算には前提条件があって、予定した通りの収入がある場合の支出予算なのだ。

収入が予定を下回っていたり、今後の見通しが楽観できない場合は予算があってもそれを使ってはならない。

●規則や規定に定めた金額も同様だ。

たとえば、旅費交通費規定では社員の出張は「新幹線指定席」になっていたとしても「新幹線自由席」で行くべきときがある。夜行バスでいかねばならない時もある。社長だっていつもグリーン席ではなく、自由席で移動すべきときがある。規定の金額は既得権ではないのだ。

●日当もそうだろう。
正規の日当は仮に一日一万円だと決めてあったとしても、業績の動向次第では日当金額を柔軟に下方修正すべきだ。上方修正はひんぱんにはできないが、下方修正は年に何度あっても認められるだろう。

●合言葉は、「会社を金のなる木にしよう!」

ただし、手をつけてはならないのは給料。特に社長の給料である。

役員報酬が法外な金額ならいざしらず、常識的な給料なのであれば、社長の給料をひんぱんに減額したり、遅配させてはならない。
それは甘えを生むもとだ。
業績不振な会社がまっさきに手をつけやすいのが自分(社長)の給料なのはわかるが、それは美しくない。むしろそれに逃げることは見苦しいと考えよう。

●社長と社員の給料を死守したなかで、会社を「金のなる木」にする方法を考えるのが社長のつとめ、社員の創意工夫なのだ。

合言葉は、「会社を金のなる木にしよう!」