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ネット時代の税務調査

●ひと月ほど前の9月2日の朝、出社するとスタッフから伝言。

「社長、さきほど税務署からお電話がありました。9月17日から三日間調査にお越しになりたいそうです。社長のご都合が悪ければ、他の希望日程を連絡ください、ということでした」

●スケジュールの都合で10月1日からにしていただいたが、8年ぶりの調査ということで少々気が重かった。

以前の調査が2000年11月で二日間だった。今回は三日あるそうで、少なくとも初日の頭と、三日目のお尻には社長にいてほしいという。

●帳簿関係については、日ごろから公私混同がないように厳しくしているつもりだ。
売上げも経費もやましいところは何もない。ただし、弱冠つっこまれるかもしれないと思う箇所があった。

たとえば、

・旅費交通費における私の日当金額の妥当性
・年に3~4回、断食道場に入所するが、その経費処理について
・非凡会や和僑会などの翌日、現地で観光するときの宿泊費や交通費について
・時々、出張先で一泊数万円のホテルや旅館に泊まることの妥当性について
・本の原稿執筆などで温泉旅館にこもることについて

などだ。

●全部私なりに考えがあるが、調査官にどこまで通用するか。

そしてとうとう10月1日(金)がやってきた。

最初、「調査官は20代の女性」と連絡を受けたときは、「くみしやすい相手」と一瞬思ったが、ある意味、かえって気を引き締めねばならないかもしれない。
調子にのってこちらがペラペラとおしゃべりしてしまうことだってある。

●お茶をひとくちつけたあと、女性調査官はこう言った。

…最低資本金が撤廃されてから会社の数が増えているなか、税務調査官は増えていない。だから本来なら3~4年周期ぐらいではすべての企業さんを廻りたいのだが、今回のように8年も開くようなことがあって申し訳なく思っています。…

●意外に低姿勢なので少々安心しつつ私はこう質問した。

「当社に調査が入るということは何かアヤシイと目をつけられた訳でしょうか?」

彼女は笑いながらこう言った。

…「調査が入いる」という言葉がすでに家宅捜査みたいに思われているようで私たちの活動主旨とずれています。毎期毎期、正しく帳簿をつけていただきたい。後々になって誤処理が発覚して思わぬ課税をさせられては中小企業さんにとっては痛手ですからね。だから社長さんの経営姿勢とか経理の体制などをこうして直接うかがって、メモをとらせていただき引き継ぎます。調査時の印象などが高いと訪問頻度が下がりますし、そうでないと、おのずとマメに訪問することになります。…

●なるほど、企業評価を受けているわけでもある。

「会社の成り立ちについて改めて聞きたい」と彼女が言うので、私は創業時の話から2000年創刊のメルマガについても話し始めた。
すると彼女はこう言った。

…そのあたりはよく存じ上げています。御社のホームページと社長のメルマガ原稿は前もって読んできました。もちろんバックナンバーのすべてをお読みしたわけではありませんが、興味を引くタイトルのものは目を通して参りました…

●私が「経営ゼミナール」の活動について話し始めると、彼女は、
「あ、それが『Wish List』のことですね」
と、こちらの用語までマスターしておられる。

だから周辺説明がほとんど不要となり、経理処理の話だけに終始される三日間となった。

●恐るべき彼女の事前学習だった。

企業のトップが発信するメルマガやブログは税務署員にも見られているのだ。

だから前置き不要でこんな会話だって起こりうる。

・「それがソニーさんから無償供与を受けたノートパソコンですね?」
・「その電子辞書は息子さん用に買われたとブログで書かれていませんでしたっけ?」
・「その台湾出張では和僑会が中止になったはずですが、訪問目的は何ですか?」

というようなピンポイントのするどい質問も飛んでくる場合もある。

●次回訪問がいつでも良いように、当社もグレーな箇所は今後、皆無にしていこうと思う。
公明正大ほど安心をもたらしてくれるものはないからだ。

<今回の結論>…追加納税額はゼロを目ざしていたが弱冠出るかもしれない。