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目ざせ!かわうそ

親のかわうそは子どもが小さい時にはエサを与えるが、年頃になるとエサの魚を与えなくなる。
むしろ、これ見よがしに自分だけ美味そうに魚を食べる。そんな親の近くに子どもたちが集まってきても、魚をくわえたまま逃げていく親。
「もらえない」と悟った子どもたちは、初めて自分で魚を捕りに行く。
最初は狙った獲物に逃げられてばかりいるが、やがて魚の捕まえ方をマスターする。それが自立の瞬間、親離れの瞬間だ。

社長もかわうそのように、自分のエサを自分で捕まえたいものである。それは食料ではなく、知識と情報のこと。
自社の経営に必要な知識や情報は何なのか、それを入手する方法は何か、ということを知っておく必要がある。

先日、こんな事があった。
あるセミナーで40才前後の男性社長からこんな質問を受けたのだ。

「武沢さん、うちの会社でも社員の評価制度を作ることが長年の懸案事項になっているが、忙しくて着手できないまま何年も過ぎてきた。今日のセミナーを聞いて、改めて評価制度を導入しようと決心した次第だが、人事評価表のサンプルのようなものがあればありがたい。武沢さんはお持ちだろうか?それをメールでいただくことは可能だろうか?」

私はこう申し上げた。

「このセミナーの帰りに本屋に行ってください。事例付きの本がたくさん売っていますから、気に入った一冊を買ってきてそれをアレンジすればすぐに作れますよ」

彼は質問をつづけた。

「評価表のサンプルがついた本が市販されているとは知りませんでした。さっそく帰りに買ってきます。もうひとつ質問ですが、個人の営業目標を達成した社員がいても、会社全体としては目標未達成や赤字だった場合、彼の査定はどのようにすれば良いのでしょうか?」

私は「行きがけの駄賃のような感じでそんな初歩的な質問をするのですか?」と言いたかったが、彼は真剣だったから、かいつまんで説明した。
でも、それすら一冊の本を読めば書いてあることなのだ。

「どうして社長はもっと本屋に行かないのだろう」と思う。
書店や図書館に足を運んだり、インターネットで検索するなどして、自分に必要な情報を自分で入手できるようになってほしい。

仮に専門的なセミナーに参加するなり、経営コンサルタントを雇うなりになったとしても、入門書にあるような基礎知識を社長がもっているのとそうでないのとでは成果は大違いだ。

中国の「古文真宝」に
・・・家を富ますには良田(りょうでん)を買うを用いず。書中おのずから千鐘(せんしょう)の粟(ぞく)あり・・・という教えがある。
家を富ますためには、なにも良い田んぼを買う必要はない。本の中にたくさんの穀物があるものだ、という教えである。

本屋は宝の山である。

本屋に足を運ぶ。自分に必要な本を自分で探す。それを読み、活用する。社長が成長し、社員が成長し、会社が成長する。また本屋に行く。
社員もそれをやる。そうしたサイクルがある会社はかならず成長し、利益をあげるものだ。