●・・・成功を遂げた著名な人々を2万5千人以上も分析した結果、次のことがわかった。すなわち、40才以前に成功した人はほとんどいないこと。そして、ほとんどの成功者が50才を過ぎてから自らのペースを発揮していること、である。この事実はあまりに驚くべきことであったので、私は、その原因を徹底的に研究してみたのである。・・
これは、ナポレオンヒルの名著『成功哲学』の一節である。
●今から36年前の1972年(昭和47年)に発売された本だからビル・ゲイツも孫正義もまだ学生だ。
この本のあとになってIT革命が起こり、20代の成功者を次々と生み出すことになるわけだが、著者といえどもそれは予知できなかったことだろう。
●私が『成功哲学』(当時、産能大学出版部刊行)に初めて接したのは20代半ばの時だった。強い衝撃を受けた。
この中に、「性衝動の転換」というくだりがあった。それは成功への13段階のうちの10番目にあたる大切なことだ。
●「多くの人が40才を過ぎてもセックス・エネルギーをもっと価値あることに使わないで浪費してしまっていることを、反省すべきであろう」とも書いてあった。
私はこれを読んだ当時、「へぇ、そんなものか。自分もその年令になったら気をつけなきゃ」と読み流した。
●あれから30年。
自分も50代半ばになってみて、ようやく著者の言わんとすることが分かりだしてきたように思える。
著者の警告を完全に忘れたまま40代を過ごしたことを、すこし後悔もしているが、まだ充分に間に合うはずだ。
●30才代にして早くも「性衝動が減ってきた」とこぼす人もいるが、エネルギーを浪費せずに済むので、ある意味、うらやましい。
性欲が旺盛な男性にとって、性衝動をいかに転換するかという技術を持つことはとても大事だ。とくに経営者は、それによって会社がどの程度大きくなるかが決まってしまうし、そもそも寿命にまで影響を与える問題だ。
●このテーマを「がんばれ社長!」で書くことにためらいはあるが、私は書かねばならないと思う。
思うに、そもそも、性欲、食欲、睡眠欲、知識欲、名誉欲、金銭欲、権力欲、事業欲、出世欲などなどの「欲」のすべての源はひとつのエネルギーではないかと言うことだ。
それは、本能的な生きるエネルギーである。
●だから、良い会社を作ろう、より良い経営者を目ざそうという諸氏は、ほぼ例外なく性エネルギーだって平均より強いと考えて間違いない。
そのエネルギーが若い頃に比べて落ち始める40代においては、その発露先を充分に管理しなければならないのは当然のことである。
●江戸時代の儒者・佐藤一斎は、『言志四録』にこう書いた。
「血気に老少ありて、志気に老少無し」
●血気とは自利のエネルギーである。煩悩と言い換えても良かろう。
一方、志気とは、利他のエネルギーだ。子どものため、愛する人のため、家族のため、社員のため、お客さんのため、会社のため、地域のため、業界のため、日本のため、世界のため、地球のため・・・と、思う相手が多く、広くなるほど志気は高められていく。
●「若い者には負けちゃおれん」とばかり、若づくりして生きることも悪くはないが、それは「血気盛ん」な若さだ。
●「血気」や「若さ」よりも大切なことは、「志気」が盛んであることだと思う。
そして、志気盛んな40代以降の人生を送るためには、二つの要素が必要になるとも思う。
そのひとつは、年令相応の性欲マネジメント法を身につけること。
あとのひとつは、志気を持つ・保つ技法である。
●残念ながらナポレオン・ヒルはそこまで書いてくれなかったから、私は迷ったままなのだ。今だ迷っているが、最近、すこしだけ努力の方向が見えてきたような気がする。
明日の原稿は40才以上、しかも煩悩の強い男性限定の内容になりそうなので、無関係の方はパスしていただきたい。
<明日につづく>