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Y工業の遵法

今朝、タクシーに乗り込むなり「お客様、シートベルトをお締めください」と言われた。
「えっ、はい」とすぐに締める私。そういえば6月1日から義務づけられたのだが、昨日も一昨日もその前の日もタクシーに乗っているのに一度も言われたことがない。

さすが社員教育が徹底している名古屋の「M」タクシーだ。
他のタクシーはどうなのだろうと、信号待ちのたびに周囲のタクシーをチェックしたが、約半数がシートベルトを締めていた。
他のタクシー運転手も信号待ちのたびに後部座席を気にしている様子。
互いに徹底具合を確認しあっているようだ。

企業にとっては、ルールや法律を遵法する精神を育てることが大切だ。それがそのまま経営理念やルールや目標を奉ずる風土をも育むことになる。

遵法といえば、今から10年以上前のこと、「順法精神の尊重」を社是に掲げるY工業のY社長からお聞きした話が忘れられない。
同社は、規律あふれる会社として私も尊敬してきた会社だ。

当時、まだ飲酒運転に対する罰則や世間の目が今のように厳しくはなかった。飲み会のあとでも車で帰宅する人が何割かいたが、互いに黙認していた時期である。

そうした頃からすでに「飲酒運転は即クビ」を宣言していたY工業のY社長。
Y社長の長男が飲酒運転の加害者として入獄したことがあり、被害者はもちろん、加害者の惨状を知りつくしていたからだろう。

「飲酒運転が原因の交通事故は絶対におこしてはならない」と、忘年会や歓送迎会で「車の人はいないな?」と絶えず確認していた。
だが、ついに事故が起きた。しかも若手の出世頭、期待のホープだったA部長が起こした。
居眠りし、バイクと接触して相手を骨折させたというのだ。

翌日、警察で事実確認を終えたY社長は、文字どおり「泣いて馬謖を斬った」。
Y社としては次の役員候補を失うのは大きな痛手だったが、迷わずに解雇した。A部長は仕事を失っただけでなく、数百万円にのぼる退職金をもフイにした。

Y社長は頭を丸めた。
そして示談が成立した日にA部長宅を訪問し、「二度とバカなことをするな」と私財から退職金相当額を手渡し、今生の別れをした。

それだけでなく、A部長が事故を起こした日を「遵法の日」として休日にした。
創業記念日でさえ休日ではない同社にとって、「遵法の日」は「次のA部長を出すな」という決意の日でもあるはずだ。

仕事ができなくても次のチャンスが与えられる。目標が未達成でもすぐには降格にならない。そんなY社でも、神聖な理念とルールを無視する者は誰であろうと即退場なのだ。

こんな会社だから規律の文化が色濃い。