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香港余話

視野を広げるには旅がいい。現地の人たちと交わることで得られる生の情報には臨場感がある。同じ話をテレビや新聞から得るのとでは月とすっぽんの違いがあるのだ。
今日は、香港マカオ旅行のこぼれ話をいくつかご紹介してみたい。

ちょうど一年前に香港に来たときは1香港ドルが16円近くだった。
ホテルのフロントで1万円を両替すると600香港ドルしかもらえなかったのに、今回は700香港ドル以上のお札をくれた。
この2割の違いはデカイ。

「なぜだろう?香港経済は絶好調なのに・・・」と思っていたら、香港ドルは米ドルとリンクしているからだという。サブプライムローン問題から始まった米ドル安が香港ドルにも影響を与えているのだ。

香港で働く社員の中には、自分たちの給料を香港ドルではなく人民元にしてほしい、という者まで出始めているという。
「香港ドルより人民元を欲しがる社員」、10年前には予想もできなかったこの現象に、隔世の感をおぼえる。

マカオの夜、タクシーの運転手に「オキャクサン、カイユウギョがいるところイキマスカ?」と聞かれた。「回遊魚」と書くらしい。

なにそれ?と事情を聞いてみると、マグロやカツオが海を回遊するように、人間が通路を激しく回遊している場所があるという。
行ってみてあ然とした。
その筋の職業のご婦人たちがおしゃれに着飾って、数十メートルの通路を行ったり来たりしている。目が合えば何かささやいてくる。
だが、こちらは言葉が分からないのと、あまりの相手の数の多さに逃げ出すしかなかった。

回遊魚で度肝を抜かれた翌日は、金魚鉢理論というものを聞いた。

「回遊魚」の次は「金魚鉢」とは・・・。

だがよくよく聞いてみると、金魚鉢理論とは、ものすごくまじめな経営の理論だと知って恥ずかしくなった。

金魚鉢理論のことを教えてくれたのは、クオリティマインドの林さん。
品質管理コンサルタントの氏が、工場経営の師匠と尊敬しているH氏の工場はシンセンにある。
ここでは多くの中国人が働くが、H氏の「人心管理経営」は見事なもので、すばらしく活性化した中国人が多数働いているという。
彼の工場の求心力は、「会社に対する忠誠心」ではなく「自己成長」にあるらしい。
自己成長のためにみんながガンバルのだ。従業員の流動も意図的に起こし、組織の活性化を図っている。
H氏はこれを「金魚鉢の理論」と呼ぶ。「金魚鉢」の水は上から替えないと悪くなるように、階層が上の人間が外にでてゆくように仕向けているというのだ。
そうすることでチャンスが回ってくる2番手3番手がモチベーションをあげて仕事をする。最近では、中国人副社長まで外に出してしまわれたという。

これが「金魚鉢理論」だ。

たしかに、上層部が固まっていて若手メンバーが出世のフタをされてしまっては、やる気ある若手が定着してくれなくなる。

「金魚鉢理論」、覚えておこう。

回遊魚、金魚鉢理論の次は「タックスヘイブン」。

税金がゼロまたは極端に低い税率の国や地域のことを言う。もともと産業を持たない弱小の国や地域では意図的にタックスヘイブンにすることによって企業や富豪の資金を誘致し、生き残りを図ろうとしているわけだ。

だが、香港やマカオの様子を見るにつけ、かのエリアを弱小と称するわけにはいかない。むしろ、国作りのあり方として日本を含む先進国も見習うべき点が多いように思う。国家運営も地方行政運営も、どんどんローコスト化や民営化することによって、企業と個人の税率や社会保障負担を大幅に下げていかねばならない。

日本だけが欧米やアジア諸国より極端に税率が高いというわけではないが、高い方の部類に入るのは間違いない。

飛行機でわずか3時間のところに香港・マカオがある。シンガポールだってある。かの国々はどんどん税率が下がっている。
法人税は最高16.5%、個人の所得税は最高15.0%になる香港。マカオでは12.0%と10.0%と更に低い。シンガポールも税金天国だ。

かつては日本に集まってきた外国からの投資が、これらの国々に流れていっている。お金が流れるだけではなく、人材の流出も加速している。
和僑会に所属する若者たちも、単に「タックスヘイブン」だから香港やマカオに渡航したのではなく、物流も金融も不動産も製造も、この地域にビジネスチャンスが集結しているからだ。
ある意味で「ビジネスヘイブン」の気風に惹かれて渡った人が多いはずだ。

このままでは日本はまずい。ものすごくまずい。
国の構造改革とは、そうした国家間競争も充分意識したものであってほしい。

法定実効税率↓
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B3%95%E5%AE%9A%E5%AE%9F%E5%8A%B9%E7%A8%8E%E7%8E%87

今日はここまで