「武沢君、幾らにする」と総務部長に聞かれた。社会人になったばかりの私に給与天引きの貯金額を聞いたのだ。
「皆さんはどれぐらいやられているのですか?」と聞くと、「みんな1万円ぐらいはやってるよ」と言われた。
「じゃあ、私も」と1万円でスタートした。賞与のときには増額したので、一年で20万円ほど貯まった。翌年もその次の年も天引き額を増やしていったので、数年後に会社を辞めるときには100万円貯まっていた。それにプラスして数十万円の退職金がもらえた。職安で手続きをすれば3ヶ月後には失業保険ももらえるという。「なるほど、サラリーマンはかなり儲かるな」ということを20代前半の私は学習した。
しかしサラリーマンをやめてしまうとなかなかこうした半自動のお金の貯まり方は経験できなくなる。ちなみに「財形貯蓄」という言葉を最近あまり聞かなくなったが、制度が消滅したわけではない。今でも大企業の多くで「財形制度」が利用されている。だが中小企業では導入比率が半分に満たないようだ。
→ http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001sa7o-att/2r9852000001safk.pdf
個人にとって最初の壁は100万円、次に300万、500万ときて、大きな節目が1,000万だろう。そうした節目の存在は、企業の売上高についてもあてはまりそうだ。
与信管理のリスクモンスター社のデータによれば、日本企業の60%が年商1億円未満で、3億円未満の会社が全体の80%を占めている。なかなか1億円の壁、3億円の節目が突破できない現状が見えてくる。データはこちら。
→ http://www.riskmonster.co.jp/anamon-olddata/pdf/area_sales201306.pdf
しかし現実問題として「節目」というようなものは存在しない。経営者の志やアイデアのスケールが、その程度である現状を表しているだけなのだ。
・一人ビジネスで年収1,000万円をめざしたい
・好きなことを好きなだけやってご飯が食べられればよい
・自分一人でどこまでやれるか試してみたい
・私は組織には不向きなタイプなので独立するしかない
そうした自己都合の動機でスタートした人にとって、そもそも1億円を超えるような売上は不要なのである。年商3,000万円とか5,000万円もあれば充分なのである。そうした会社が日本企業の6割を占めていると考えても良いように思う。
年商の壁が破れない最大の原因が、この「動機が自己都合」だとするならば、二番目に多い原因は「アイデアの枯渇」だろう。
会社を時流に乗せ、いつまでも若々しいビジネスモデルを保持するには絶えずイノベーションを起こさねばならない。新しい知識や技術、新しい人材や新しい仕組みを取り入れていく必要がある。ところが、安逸と怠慢、怠惰によってイノベーションを怠り、会社を衰退化させている経営者が多い。
そこで提案。渾身の経営計画書や会社の将来ビジョンを作ろう。
そこに「成長ステージ計画」を盛り込むのだ。第一ステージは「とことん自己都合を満たす期間」。そこに3年~5年に期間を設定する。この第一ステージで行うことは、好きなことを思いきりやって年商や年収の安定化と蓄財を計る。個人で蓄財するもよし、会社のなかに貯える方法でも良いので、とにかく必要な年収と自己資金を貯めることに専念する。その期間中は、投資と経費は抑制する。
第二ステージのテーマは「人材と仕組みづくり」。この期間の3年~5年で法人としての基盤を確立する。第三ステージのテーマは「企業としての自律成長」。後継者や分社の社長が育っていく仕組みをつくり、オーナーはホールディングカンパニーの持株をもって経営人材づくりに注力する。第四ステージが「資産ポートフォリオの形成」。本業以外の分野に投資し、一生収入の心配がいらない構造をつくりあげる。
以上の10~15年計画をつくり、今の事業ステージを自覚しながら経営をする。今から社長業を勤められる時間が30年以上ある人はじっくり腰を据えて取り組んでいける。残された時間があまりない社長にとっては、あまり猶予期間はないと思い、ラストチャンスのつもりで計画作りに取り組んでみよう。
こちらのセミナーでは、実際にその作り方もご伝授する予定。
・4/16(木)東京セミナー
→ http://www.e-comon.co.jp/session/?p=5298
・4/23(木)名古屋セミナー
→ http://www.e-comon.co.jp/session/?p=5519