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経営理念・・Simple

以下、仮名ながら実話。

愛知県名古屋市の丸万製作株式会社の丸山社長は、経営計画書を作り始めて10年になる。15名の社員に対して、年度初めと中間期の2回、方針発表を続けてきた。そして、この間、社員数は約2倍になり、売上高は10倍(6億)、利益は20倍(6,000万)になった。

「Simple」

英単語たった6文字だけの経営理念であり、この理念はあらゆる活動に反映されている。まず、過去10年の方針書を見てすぐに気づくことがある。それは、ずっと8ページなのだ。平成5年度版から14年度版まで、なぜかすべてが8ページで収まっているのだ。理由を尋ねてみた。

「8ページにこだわっているのは、末広がりで縁起が良いからというくらいですね(笑)。とにかく、シンプルな経営に徹したいので、まずは、方針書の厚みからそれを実践していこうということですね。」

シンプルなのは、ページ数だけではないようだ。まず組織がシンプルだ。企画開発、設計、製造、品質管理、営業、経理、人事などの各業務は部署分けされていない。組織図を見ると、社長と取締役会の下には、第一事業部と第二事業部があるだけ。たったそれだけのシンプルな組織図なのだ。経理も庶務もない、本当に出来るのか?

「武沢さん、実際には経理や事務を任せている社員はいますが、わざわざ部門にしていないだけのことです。この10年は経営をシンプルにするための戦いでした。最初のうちは、中古工作機械を何台か入れて本当に自動車部品を作っている時もありました。でも一番の強みは、研究開発です。大手メーカーの試作品開発のアウトソーサーとして、今まで手がけてきた仕事は、自動車、産業機械、農機具、パソコン、ロケットなど多岐にわたります。数えればきっと30以上の産業分野で試作品開発を請け負ってきています。」

シンプルにするのが一番難しいのは何かを聞いてみた。

「そりゃ、なんと言っても仕事の種類でしょうね。あっという間に仕事の守備範囲は拡大し、同時に深さも追求されるようになる。面積だけならいざ知らず、深さを加えた容積で仕事が膨張していくのをどうやって防ぎ止めるかが最大関心事です。」儲かっているからとか、将来の布石になるから、などという理由で仕事を請け負ったり、継続受注していると、あっという間に社員数も部門数も増えてしまう。

なるほど、「Simple」もここまでこだわれば哲学になる。経営計画書のページ数、組織と社員数、仕事の範囲、これら全てに定員を定めることによって、仕事の膨張を防ぐことができる。おのずと80対20の一番おいしいところだけで経営しようという戦略がお見事だ。