正社員の人材育成について、2007年版中小企業白書では次のように伝えている。
1.計画的なOJTを実施している企業・・・16.7%
2.ジョブローテンションを実施している企業・・・3.9%
3.OffJTを実施している企業・・・7.9%
4.自己啓発に対する支援を実施している企業・・・9.9%
(中小企業庁2006年12月調査)
「え~、そんなに少ないの」と、はじめてこの結果を見たとき唖然とした。正社員に対して計画的な人材育成がほとんど行われていない現実を突きつけられたようだ。
その一因として、新入社員が毎年規則正しく入ってきていない会社が多く、なかなか人材育成がシステムにならないことも考えられる。
また、経営の現場からは「教育しているヒマがない」という声も聞こえてきそうだが、その実態は「教育システムがない」「教育システムの作り方が分からない」ことからくる “教育の後回し” があるのではないかと考えている。
そこで今日は提案がある。
「すぐにやれることからやっていこう」という提案である。取り急ぎ次の二つについては、いかなる企業でもすぐにやれるのではなかろうか。
1.新入社員教育読本を書店(またはネット)で購入し、輪読会をやる。何ページが輪読したあと、社長または先輩社員がその内容を補足説明するという会を三ヶ月間、毎週行う
2.読書感想文を書かせる
毎月1~2冊、課題図書を新入社員に配布し、その読書感想文を書かせることで読書力、読解力、作文力を鍛えてあげる。
その読書感想を元にしてミーティングや茶話会をしてもよい。
「社員にもっと本を読んでほしい」という思いから岐阜市のY製作所(社員数40名)では、数年前に「読書支援制度」を作った。
領収書と一緒に本を経理に出せば、その分の現金がすぐに出るというもの。「週刊誌やコミック以外ならなんでもOK」という太っ腹な制度だったが、数ヶ月たっても誰一人利用しなかったという。
推理小説でも恋愛小説でもお笑い本でも何でも良いのに利用しない。
その実態に業を煮やした社長は、次の手を打った。
「社員書庫」を作ったのだ。会議室に大きめの書棚を設置し、社員書庫と名付けて持ち出し自由の書籍をそこに並べることにした。
「氏名と書名を記入してください」と書いた貸出票が棚にぶら下がっている。
自分で書店に行かない社員でも、書庫にある本は手に取る。毎月いろいろなジャンルの本を投入していき、貸出票にたくさんの名前が書かれるようになっていった。
だが、実際に本を最後まで読んでくる社員は少数派だった。
そこで次の手を打った。
昨年、Y製作所では社員の読書力を高めるための大胆な企画を発表した。「読書感想文コンクール」を年に二回開催するというもので、第一回コンクールの骨子が次のように発表され、社員たちは騒然としたのだ。
書庫にある本を読んでの読書感想文を2,000文字以上、10,000文字未満で提出すること。役員会でそれを審査し優秀者は表彰する。
表彰内容が豪勢だった。
・社長賞 1名 「香港マカオ 視察ツアー7日間の旅二名分ご招待」
(副賞5万円と6日間の特別休暇付き)
・専務賞 1名 「国内温泉宿泊チケット付き3日間の旅二名分ご招待」
・佳 作 3名 「商品券1万円分」
社員40名のうち24人から応募があった。そのうちの半数はいずれも力作で、選考は大いにもめたそうだ。
おそらく今年のコンクールも盛り上がることだろう。
自己啓発を支援する方法は読書以外にもたくさんある。
・資格取得支援
・通信教育受講支援
・専門学校通学支援
・市民大学通学支援
・公開講座受講支援
・・・etc.
社員の勉強意欲をしっかりと受け止める制度を作っていくことが自己啓発支援だ。
あなたの会社らしい個性的な制度を考案してみようではないか。社員からみても、企業からみても充分に魅力的な制度が作れるはずだ。