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続・社長の大仕事、それは引退

昨日号の内容にたくさんのメールが寄せられた。ある経営者の方は、

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「がんばれ社長!」の1月29日号を拝読して、大変深く考えさせられました。今までは、「会社を売る」とか「持ち株を売る」などの話を聞くと、どこか欧米的で抵抗がありました。
自分の都合だけで会社を放り出すようで、どうにも好きになれなかったのですが、逆からみればいつまでもオーナーの座にしがみつく必要もないかと考えさせられました。

会社もひとつの「商品」とみなし、魅力ある「商品」をお世話になった若い後継経営者に託し、大きく育ててもらうことは子供の乳離れならぬ、会社の創業者離れだと考えれば良いかと。明日の続編を楽しみにしています。
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FP(ファイナンシャルプランナー)のある方は、
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経営者の個人資産形成をお手伝いする仕事をしていますが、今日のメルマガの話題は私にとって追い風をいただいた気分です。
会社や株式を売るだけで6.25億円が得られない場合も少なからずあると思いますが、足りない部分を社長の個人資産で補っていただきたいのです。そのためには、若いうちから資産形成を意識した取り組みをされて、時間を味方にしていただきたいと願い、毎日の仕事に取り組んでいます。
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というメールをいただいた。

さて、昨日の続き。例によって、ベンチャー・リンクの小林会長の講演内容をベースに整理してみた。

「うちの会社を買ってくれるところないかな~」という話を冗談めかして聞くことがあるが、そんな淡い願望のようなことを言っていてはならない。
もっと真剣になって、誰もが買いたくなるような会社を作るべきである。
それも遠い将来ではなく、長くて10年。可能ならもっと短い期間で。

では、「どうすれば買いたくなるか」ということと「誰に買ってもらうか」の両面で見ていこう。
まずは「誰に買ってもらうか」という問題から。

息子または娘、または娘婿(以後、略して「息子」)を後継経営者にする方法を考えてみよう。

基本スタンスとして、身内だからという理由だけで後継者にしようとすると失敗する。
後継候補者とは緊密なコミュニケーションがとれていなければならないのだ。
なかには、近すぎる関係ゆえに特別気まずい状態に陥っている親子もある。そんな関係のままで息子に会社を継がせるなど、社員もお客も息子も親も、すべて不幸になる道だ。

事業承継とは経営をバトンタッチしておしまいなのではなく、バトンタッチする前も後も、しばらくは密接なコミュニケーションが必要となるもの。そんな当事者同士がぎくしゃくしてはうまくいくものもいかなくなるのだ。

親子の確執があれば、息子への事業承継はあきらめるか、あるいは次男や三男への承継を考えよう。

もし「確執」ほどではないが、何となくぎくしゃくしているだけなのであれば、親子の関係を良くするための取り組みをしよう。
飽くことなき関係改善をはかろう。

ただし、息子しか継ぐ候補がいないと決めてかかるのはよくない。
社員や取引先、金融機関など、あらゆるところに相談して後継候補者の選択肢を広げていこう。
息子しか候補がいないとなると、親は限りなく息子に対して弱腰になり甘やかせてしまうので、息子も選択肢の一人とせねばならない。

息子との関係をよくする取り組みについてだが、たとえば、親子一緒になって特別な体験を共有するのが効果的だろう。

余談ながら、私(武沢)は長男の高校入学祝いに二人で夏山登山をしたことがある。名古屋を出発して三泊四日で槍ヶ岳登頂という大プロジェクトを企て、いやがる息子を鼓舞しながらアタックに成功した。

あれから4年たった今でも思い出話に花が咲く。

それほど特別な体験をたくさんしてきた。だがこの時、私はひとつ重大な失敗をしでかした。それによって、親子のきずなが強くなるチャンスを逃してしまったようだ。

それは、山小屋でも私は日常生活の延長で晩酌をやり、その間、息子に洗濯などの雑用をやらせていた。今思えば、ひどい親だ。

だから息子にとっては、「オヤジとの登山など二度と経験したくない」苦い記憶となってしまったようだ。

その二年後、反省した私は長男を中国に連れ出した。
彼が関心を寄せている国だからだ。
この時は登山の反省を踏まえ、雑用はさせなかったが、朝から晩まで二人で夢中になって観光した。
せっかくホテルの部屋を一緒にしたのに、連日、疲れ切って会話の時間がほとんどとれなかった。

できれば、親子の会話が進むような体験をしたい。

親子による夏山登山も観光旅行も、それがきっかけになって会話が進めば大成功だが、会話が生まれなければあまり意味がない。

そこで親子の関係改善の方法を二つ提案しよう。

ひとつは、親子一緒になって自己変革研修を受けるという方法。例えば「7つの習慣研修」など、人生に成功するための習慣を学ぶ研修などは、仮に60才の親と35才の息子が受けにいっても価値がある。

もちろん50才と25才でも構わないし、45才と20才でもよい。

自己改革に定年なし。何才になっても自分を改革するための研修を受ける親の姿勢に息子はついてくる。
自分はもう何も変わらない、という親の雰囲気に息子は抵抗感をもつものだ。

二つめの方法は、可愛い子には旅をさせる方法。

旅とは言っても、本当の旅行ではなく、創業経験をさせる方法がベスト。親が経験した創業体験と同じものを息子にさせるのだ。

資金調達や経営計画作り、人の採用や教育、資金繰り、営業活動、社内管理やシステム作りなど、経営に関するすべての活動をゼロから経験させてみる。
ある意味、経営者として同志になることを通して、親子とは違う立場でコミュニケーションがとれるようになる。

ゼロからの起業も結構だが、もっとも取り組みやすい方法は、何かのFCに加盟すること。
オーナー兼店長として仕事をしながら息子は経営を身体で学んでいく。
時々会いにいっては、激励しつつ助言も与えてあげよう。息子は創業の苦労を通して親に対する畏敬の念も生まれてくるだろう。

おっと、

息子について語るうちに紙面が尽きたようだ。明日につづく。いや、明後日にも明明後日にも続くかもしれない雲行きだ。