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立ちションが直る日

昔、お酒に酔うと所かまわず立ちションする社長がいた。「○○さん、こんなところでみっともないですよ」と注意しても、そのクセはずっと直らないままだった。

彼には大言壮語癖もあって、

「俺を世間常識の目で見ると見誤るぞ。第一、おれが以前に勤めていた名門商社は、俺の辞表を受け取るという間抜けな対応をしたが、今では、当時の人事部長までもが「お前をうらやましい」と言いよってくる。あいつらはしょせん飼い馴らされた犬で、小屋の外ではなにもできないが、俺は誇り高き野良犬だから、どこででもエサにありつくし、何より永遠に自由だ!」とまで言い放っていた。

愛すべきキャラで人気者社長だったが、会社を大きくできないまま世を去った。

私は名経営者は名サラリーマンだと思う。

「サラリーマンが勤まらないから自分で会社を作って社長になった」と、さも自分が組織の鋳型にはまらない器であるかのように吹聴する経営者もいるが、本来、名社長はサラリーマンをやらせても名サラリーマンではなかろうか。

組織になじまない型破りな人は、自営業やタレント、アカデミックなどの分野で成功するかもしれないが、経営者としては大した会社は作れないように思う。
なぜなら、人間や組織というものを理解できていないからで、それがないと会社は大きくできないからだ。

社長をやりながら他社で修行して組織の勉強をすることも可能だが、現実的な一手としては、ナンバー2(経営参謀)を血眼でさがすこと。

参謀はあなたより若いかも知れないし、年上かも知れない。男性かも知れないし、女性かも知れない。正社員かも知れないし、パートタイマーかも知れない。社内にいるかも知れないし、外部にいるかも知れない。いずれにしろ、最強のタッグチームが組める相手だ。

劉備玄徳に諸葛孔明がいたように、”経営の神様” 松下幸之助から神サマと呼ばれた高橋荒太郎がいたように、本田宗一郎に藤沢武夫がいたように、豊田喜一郎には石田退三がいたように、井深大には盛田昭夫がいたように、9年連続日本一監督・川上哲治に名参謀・牧野茂がいたように・・・、あなたに彼(彼女)がいる。

真の参謀はトップの立ちションを諫めるだけでなく、会社を大きくさせる。
いや、大きくなれそうなトップの所にしか彼(彼女)は来てくれないものなのだ。