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ホメオスタシス その2

さて、「恒常性維持」とも言われるホメオスタシスについて、昨日のつづき。

恒常性維持とは、その名の通り、長い間保たれた状態を維持しようという本能のことだ。そして、この本能は、私たちの肉体のみならず知性や心、それに組織などでも働いていると考えた方が自然だろう。

英会話でもピアノ教室でも書道でも何でも良い。新しく何かを修得するためにスクールへ通い出したとしよう。ピカピカのテキストをかばんに入れ、不慣れな道順で教室にたどり着く。先生や他の生徒たちには、誰一人知人がいない。そこにある全ての情報が新しく、また、すべてが緊張して接すべき対象物だ。

そうして始まった英語のレッスンはスラスラと頭に入り、まるでスポンジに染みこまれる水のように英語が上達する。そして、どこかでその成長が止まる。

そう、人間は肉体的にも知的にも精神的にも、階段を上る要領で進歩する。しかも普通の階段と大きく違うのは、一段ごとに踊り場があり、しかもその踊り場はやけに長い。アルファベットで書けば「N」に近いが、この「N」ほどまでには、第二画が下がらない。それが学習曲線だ。

一定のレベルに到達すると、練習の効果がほとんどあるいは全くなくなるように感じる時がある。達人や名人への道には、このような避けては通れない期間が何度かあるのだ。

「達人のサイエンス」(ジョージ・レナード著:日本教文社刊)では、次のように単語を使い分けている。

・スパート・・・一気に上達し、新しい水準に到達する期間。
・プラトー・・・スパートで上がったレベルよりも少し下がった位置で長く長く続く現状維持の期間。

そして、同著では、決して達人に到達出来ない3つのタイプの人間を紹介している。

1.ダブラー(ミーハー型)・・心があちこちに移ろいやすいタイプ
衝動的に始めて衝動的にやめる。このタイプは入門時の熱中のシナリオが大好きだが、最初の壁で挫折し、すぐに他のこと   に “入門”する。

2.オブセッシブ(せっかち型)・・偏狭でゆとりがないタイプ
このタイプは一気に入れ込む。最終目標に到達するまでのシナリオを思い描き、並はずれた熱心さで取り組み、そして成果   を出す。だが、自分が「プラトー」に到ると、それを受け入れるのが嫌で、更に成果を出そうとがんばる。そしてどこかで   キレる。

3.ハッカー(のらりくらり型)・・熱心さに欠けるタイプ
もともと上達への意欲が乏しい。プラトーに長い間とどまっていても、その事に不満を感じないし、何かを変えようとも思   わない。従って上記二つのタイプとは違ってキレることがないので脱落はしにくいが、上達もしない。

そして、同著によれば、ほとんどの人がこの3つのタイプのいずれかに当てはまると言い、人数は均等に近いとも述べている。

さて、本題。
「プラトー」と呼ばれる、長く続く現状維持のような期間、ここの乗り切り方が問題なのだ。ボンヤリしていると、私たちの「ホメオスタシス」(恒常性維持)が働いてしまい、あなたを元にいた位置へ戻そうとするのだ。

あなたを何かの分野の「マスター」に仕立てるためには、長く退屈なプラトーを克服しなければならない。その方法について明日、考えてみよう。

<明日に続く>