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老いるアジア&独走する日本

ある会社の宴席で。

「社長、日本は大丈夫でっか?このままだと危ないんちゃいます」と新入社員。社長が彼にその理由を尋ねると、「年金は不祥事だらけやし、役人も政治家も民間企業と癒着して仕事をさぼってはる。できれば、うちもそんな日本を脱出してアメリカかヨーロッパか中国あたりに移転したほうがいいんちゃいますぅ」

この社長は「そうだな。ま、そんなことより飲め」とビールをついでいたが、出来ればガツーンと一喝してほしかった。

「日本が世界一や。世界一やで、国内はチャンスだらけや」と。

ところで、昨日号では『超長期予測 老いるアジア』のデータから、経済大国日本、人口大国日本がやがて転落し、経済規模においては世界の中堅国程度に沈んでいくという日本を見てみた。

読者からのメール。

・・・武沢さんへ。シンクタンクの未来予測などあてになりませんよ。

日本がもっている固有の技術や特許の数々を資産換算したら厖大なものになるのをご存知ですか。人口予測だけを元にした経済規模予想などナンセンス。我が日本が、中国やインドの何分の一かになってしまうという学者の予測など信じたくありません。日本人の資質の高さを信じたいです。予測通りにならないようにベストを尽くすのが、武沢さんがおっしゃる「志ある経営者」というものではありませんか?

第一、人口減少社会を到来させるような世の中の流れを私たちが変えれば良いわけですし、日本企業が世界に打って出て外資を稼げば良いわけですから。日本はいつまでの世界の大切な一員であることが世界のためでもあると思っています。
・・・

という主旨のメールが2~3通ほど届いた。私も心意気では同感だ。

シンクタンクがあてになるかならないかは別にしても、人口予測を元に経済規模を見通すのは有効な手段だと思う。すくなくとも昨日で紹介した本は、データと根拠をあげて説得力充分な予測をしていることには変わりない。

ところで、ここにまったく別の未来予測を発表している本がある。

『独走する日本』(日下公人著、PHP研究所)という本だ。

経済的影響力だけでなく、日本はすでに文化的精神的な分野で世界一であり、そのことを欧米の若者は気づき始めていると著者は語る。

こんなくだりがある。(武沢簡約)

・・・

国際会議ではポケモンを使って提案すればよい。

宮崎駿監督のアニメ作品群や任天堂のポケモンが世界を席巻した。
そのことに危機意識を感じた米ディズニー社は全米に「ピカチュウは知的に劣化した子どもの教育上悪いアニメだ」とキャンペーンを展開した。
だが、素直な心で良い悪いを感じる子どもたちは、ポケモンを支持した。キリスト教文化が底流をながれる欧米では、最後に勝つのは正義のヒーロー・ヒロインという勧善懲悪ものの物語が多い。たしかにそれはロジックが通っていてスカッとするが、果たしてそれだけが結論だろうかと感じていたところに日本作品が入り出した。

日本作品に見られる決着は、悪いやつらも最後には見方になる。みんなで話し合って、そんな悪いことはやめようよ、という欧米にはなかった話し合い的決着だ。
こうした日本的結論の出し方をみて、昔の欧米人は「あいまいだ」、「理屈が通っていない」と批判したが、今の欧米の子ども達はこうした物語に新鮮な感動をおぼえる。(So Cool!)

ポケモンブームがアメリカに始まってから10年たつ。あのころの子どもがすでに大学院にいる。その子どもの親も社会の第一線にいる。

だから、今後の国際会議はポケモンの例をあげながら、その精神を語り、解決をはかるような流れにもっていく役割を日本は果たすべきである。それほど、今日の世界情勢は複雑化・高度化して論理と理屈だけでは決着が見られない社会になってしまった。
・・・

その他、「ヤサシイ(優しい)」「カワイイ(”可愛い”ではないほうの女学生が使うようなカワイイ」などが英語や中国語に翻訳不能なボキャブラリーとしてそのまま世界で使われている様子なども紹介し、精神文化で「すでに日本は独走している」と語る。

シンクタンクのデータには表れにくいこうした無形の側面も理解しながら、日本と我社の未来を考えることも経営者の大切な役割だと思う。

ところで、「日本の将来は大丈夫でっか?」と新人に聞かれたら、あなたはなんと答えるだろうか?

独走する日本 http://www.amazon.co.jp/dp/4569695795/