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老いる日本、老いるアジア

人口ボーナスと人口オーナスという言葉がある。ボーナスもオーナスもともに英語で、オーナスとは「重荷」という意味だ。

国民の人口増加がその国の経済発展にプラス材料となる場合を人口ボーナスといい、その逆に、国民の人口減少が経済発展の重荷になる状態を人口オーナスという。

戦後の日本経済の奇跡的発展には人口ボーナスが働き、21世紀の日本経済には人口オーナスが作用していることになる。

当然のことながら、戦後50年続いた人口ボーナス期の経営や政治の常識とは思い切って決別しなければならないのだ。

そのあたり、『超長期予測 老いるアジア』(日本経済新聞社)を興味深く読んだ。同著によれば、日本だけでなく中国・インドといった次の経済大国もすでに老い始めているという。

『超長期予測老いるアジア』(日本経済新聞社)

日本の行く末を案じながら、日本という国をどう舵取りすべきか。私たちは経営者は何をすべきかを考えるのに好著だと思う。
以下、同著のデータなどをもとに理解を深めてみたい。

1950年(昭和25年)当時、日本は世界第五位の人口大国だった。

1位:中国 5.5億人
2位:インド 3.6億人
3位:アメリカ 1.6億人
4位:ロシア 1億人
5位:日本 0.8億人
(1950年の世界人口 25億人)

それから半世紀たった2005年(平成17年)、日本の人口はまだ世界十位の人口大国だ。

1位:中国 13.3億人
2位:インド 11.1億人
3位:アメリカ 3.0億人
4位:インドネシア 2.2億人
5位:ブラジル 1.9億人
6位:パキスタン 1.6億人
7位:バングラデシュ 1.4億人
8位:ロシア 1.4億人
9位:ナイジェリア 1.3億人
10位:日本 1.3億人
(2005年の世界人口 65億人)

これから43年後の西暦2050年(平成62年)、日本の人口は世界二十位となり、すでに人口大国ではなくなっている。しかも世界人口に占める日本人の割合は、1950年当時に比べて3分の1以下に低下している。

1位:インド 17.3億人
2位:中国 12.6億人
3位:アメリカ 3.9億人
4位:ナイジェリア 3.7億人
5位:パキスタン 3.5億人
6位:インドネシア 2.9億人
7位:ブラジル 2.8億人
8位:バングラデシュ 2.7億人
9位:エチオピア 2.3億人
10位:コンゴ民主共和国 1.8億人
11位:メキシコ 1.4億人
12位:エジプト 1.4億人
13位:フィリピン 1.3億人
14位:ウガンダ 1.3億人
15位:トルコ 1.1億人
16位:ケニア 1.1億人
17位:ベトナム 1.1億人
18位:イラン 1.0億人
19位:アフガニスタン 1.0億人
20位:日本 0.9億人
(2050年の世界人口 94億人)

こうしたトレンドを見せられると、日本=人口大国=経済大国という図式が完全に過去のものとなったことは自明の理だろう。

2050年の日本の経済規模は、中国・インドといった人口大国に追い抜かれる。いや、ちぎられると表現すべきか。

2050年の中国経済は日本の6.7倍に、インドは3.8倍に、ASEANが1.8倍になると予測されている。

かといって、その頃の日本は「小国」路線を歩めるほどの小国でもなく、世界にモデル国家なき独自の舵取りが求められているのだ。

ところで、人口急増国は人口ボーナスが期待できるわけだが、もろにその恩恵を受けられるかどうかは定かではない。
様々な条件が整えば、今後の人口大国はブリックスに次ぐ経済大国になれるだろうが、人口増加が経済発展に直結することなく人口減少国家になっていくケースもあると予測されている。

さて、有史以来、綿綿とつづいてきた日本の人口増加社会はついに途絶えたことが以下のデータでも分かる。

以下は、同著で紹介されていた表で、資料は鬼頭(2000)から抜粋とある。

近代以前の日本の人口推移

縄文早期 2万人
縄文前期 10万人
縄文中期 26万人
縄文後期 16万人
弥生   59万人
725年(奈良) 451万人
800年(平安) 550万人
1150年(平安) 683万人
1600年(慶長)1,227万人
1721年(享保)3,127万人
1786年(天明)3,010万人
1792年(寛政)2,986万人
1846年(弘化)3,229万人
1873年(明治6)3,330万人

中国やインドなどのアジアの大国が人口ボーナスの恩恵を受けながら近い将来、世界の経済大国になる。

だが、それらの国を含むアジア全域の高齢化も急ピッチで進み、中国やインドといえども人口ボーナスの恩恵がストップするのもそれほど先の話ではない。

そして、ブリックスも含む世界の先進国全域も、今後急速に人口オーナス社会・人口減少社会の入り口に立とうとしている。
その最先端を猛スピードで突っ走る日本の行く末を、世界中が注目しているといっても過言ではない。

これからは外国に学ぶばかりが勉強ではない。ゲームやマンガやコスプレのように、世界にビジネス情報を発信していくのが日本の社長の役割だ。

がんばれ日本!がんばれ日本の社長!