断食道場から戻り、自販機やコンビニで何でも買えるし何を食べても飲んでも自由だとわかると、かえって慎重になるものだ。
太った豚より痩せた狼がいい。単純にそう思ってきたが、豚の体脂肪率は13%と知ってから、自分は豚の2倍以上太っていると思うと自分が許せなくなった。
そのためには、ストイックでありたいと思い、胃袋を小さくするために先週一週間を投資して断食道場に行った。
昨日も食事は控えめにしてジムで走った。
ジムの帰りにはレンタル店に立ち寄って『燃えよドラゴン』(1973年、ブルース・リー主演)を借りて観た。
リーのあの肉体を自分にかぶらせたいからだ。
こうあらねばならない、と決めたら妥協は許したくない。
「わかっちゃいるけど、現実はね」などと、下卑た笑いをふりまきたくない。
「知行合一」、知っていることと行うこととは一緒でなければならないという厳しい陽明学の教えを大切にした侍に河井継之助がいる。
そういえば、「がんばれ社長!」東京オフィスのすぐ近くに河井がいた長岡藩邸があったことを最近知ってうれしく思っている。
場所は、愛宕グリーンヒルズから皇居へ向かう途中だ。
江戸時代の地図を見ると相当大きな敷地だったことがわかる。さすが、譜代大名の藩邸だ。
今、そのあたりを歩いていると、河井の気分がほんの少し味わえるようで楽しい。
継之助ファンを自認する私は、今年、長岡まで行って、彼の自宅跡地に建った記念館を見学した。
もちろん、駅の書店にはしっかりと『峠』が売られている。名古屋に戻る新幹線で司馬遼太郎のこの名著を読んだ。この本を読むのはもう十回目くらいになるが、いまだに発見がある。
今回は次の箇所が格段、胸にきた。
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志は塩のように溶けやすい。男子の生涯の苦渋というのもその志の高さをいかにまもりぬくかというところにあり、それをまもりぬく工夫は格別なものではなく、日常茶飯の自己規律にある、という。箸のあげおろしにも自分の仕方がなければならぬ。物の言いかた、人とのつきあいかた、息の吸い方、息の吐き方、酒ののみ方、ふざけ方、すべ
てがその志をまもるがための工夫によってつらぬかれておらねばならぬ、というのが、継之助の考えかたであった。『峠』上巻
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なぜ胸に来たかというと、次のように文書を書き直してみたからだ。
・・・経営理念は塩のように溶けやすい。経営者の苦渋というのもその理念の高さをいかにまもりぬくかというところにあり、それをまもりぬく工夫は格別なものではなく、日常茶飯の自己規律にある、という。
経営理念というものは、朝の起床から始まって出社前になにをするか、どのような仕事のすすめかたをするか、人とどう接するか、何に喜び、何に怒り、何に哀しみ、何を楽しむか、などすべてがその理念をまもるがための工夫によってつらぬかれておらねばならぬ、というのだ。
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日常の自己規律という面に、河井もブルース・リーもストイックな面において似ている。かくありたいと思う。