「最近、大阪が元気ですね」「名古屋が元気ですね」「○○が元気ですね」などの会話を耳にすることがある。たしかに部分的に活況を呈していて元気そうに見える点もあるが、本物だろうか。昭和の後半から平成にかけての高度成長時代を知っている者からみれば、まだまだ今の元気さなど、カンフル注射を一本打ってもらった程度の元気さにしかみえない。日本国中が地鳴りをあげて成長していたあの時代を取りもどしたい。
人は失敗や苦境のなかから何かを学び、成長し、大人になっていく。大人になって成熟すると、若さも一緒に失われがちなのが問題である。できれば若さをキープしたまま大人になれないものだろうか。
具体的には、次のような大人ばかりであったら日本はもっと元気になる。
・将来に大きな希望がある大人(守りに入らない、分別くささがない)
・柔軟さがある大人(自説に固執せず、心も身体も柔らかい)
・たえず成長のプロセスにいる大人(何ごともどん欲に吸収する)
・冒険ができる大人(あえて、無謀で恐いもの知らずの一面がある)
・何ごとにも興味がある大人(訳知りのウンチク話ばっかりしない)
・フットワークが良い大人(良い意味で腰が軽く、活動範囲も広い)
そうした大人をあなたは何人思い出せるだろう。それほど多くはないはずだ。私は建築家の安藤忠雄氏の顔がすぐに思い浮かぶ。氏との面識はない。一度東京駅の構内をすれ違っただけのことだが、氏の人生や作品、それにメッセージにはずっと注目してきた。若さと反骨精神がビッチリ詰まった大人だからだ。調べてみたら「がんばれ!社長」でも14回ご登場願っている。
その安藤忠雄氏が経営者を対象に公開講演を行うことは非常に珍しい。特に膵臓ガンを全摘されてからは、先々の講演予定を入れることには勇気が要るのかもしれない。そんな安藤忠雄氏にアポを取り、堂々口説いてきた大阪の若者がいる。株式会社エックスラボの藤勝行社長(33)だ。
藤社長は、安藤氏との面会の席でいきなり「日本の起業家や経営者は元気かい?」と問われた。「はい、元気だと思います」と答えた。
しかしもう一度、「本当にそう思うのか?」と問われたとき、言葉を飲み込むしかなかったという。建築家・安藤忠雄は世界の若者を見て、彼らの元気さを知り尽くしている。それにくらべて藤社長が感じている元気さとは別のものかもしれないと言葉を飲み込んだのだ。
安藤氏は、最近の日本の起業家に元気が無いことや、関西を盛り上げたいという気持ちがとても強い。「僕がそのために役立つのなら、いいよ、講演やりましょう!」と話はトントン拍子に進んだ。ところがスケジュール調整が難航をきわめた。当初、昨年の夏に決まっていた六本木ヒルズでの講演も安藤氏のがん手術のために延期になっている。
何度かのスケジュール変更の結果、ついに実現できたのがこちらの講演会。安藤氏と藤氏の地元大阪のグランフロントで開催される。
私(武沢)はこの日、自分が開催するセミナーが名古屋であるが、それをキャンセルにしてまでも聴きにいきたい衝動にかられた。またとないこの機会を利用できる方々がうらやましく感じる。スケジュール調整がつく方は是非、「生・安藤忠雄」に触れることをおすすめしたい。このお値段で、しかも、サイン入り本までもらえる凄い企画。