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ムードメーカー

30年前の「華麗なる一族」をDVDで見た。
テレビ同様、映画の方も “華麗” なるキャスティングで楽しいのだが、いったいどこをとって “華麗”というのか、今でもわからない。
それほど、あの万俵(まんぴょう)家の雰囲気って “華麗” にはほど遠い重さがある。

もし、あのファミリーに陽気な竹中直人のようなお祭り男というか、ムードメーカーがいて、家族でカラオケへ行ったり、ボーリング大会を企画するなどしたら、父と長男の確執はもっと和らいでいたのではなかろうか。

ムードメーカー、ラッキーボーイ、リードオフマンという存在は、常勝チームや組織には必ず備わっているもののように思う。
それがいなかったのが、万俵家の不運だったのかもしれない。
昔、私がスポーツ用品店で店長をしていたころ、S君が店長代理として補佐してくれた。

正社員が3名、登録パートアルバイターを含めれば20名近い組織を指揮していく店長には、ちょっとした経営者の力量が必要だった。
だが、機械設計の専門学校卒で町工場出身の25才の私にとって、リーダーシップはおろか社交性すらほとんど備わっていなかったように思う。朝礼のあいさつですら、緊張で声がふるえたほどだ。

そんな私を陽気に補佐し、店内のムードをいつも盛り上げてくれたのが、S君だった。
私は、彼のつくってくれるシナリオの通りに動くだけでよかった。おみこしに乗せられているだけで全店(当時30店舗)ナンバーワンの実績を上げ続けることができた。

とにかく遊んだ。遊ぶのが仕事だと思えるほどによく遊んだ。実際、遊びながら商品知識を身につけていったことも多々ある。

昼の休憩はとなりの空き地でゴルフの練習をしたり、缶けりもした。
食事会や飲み会はもちろん、閉店後は売り場全体を使ってパターゴルフをしたこともあるし、ボーリングに夢中になって200点台の勝負をしていたときもあった。ほぼ全員がこうしたイベントに参加してくれ、チームは一体感を強めていった。

その延長で仕事にもゲーム性を求めるようになっていった。
部門別の売上を競いあったり、スタッフ20名の各々の貢献度を相撲の番付表にして張り出し、月間MVPを競い合ったりもした。

そうした日頃の努力(遊び)の結果、全店でもっとも早く一日売上高1,000万円(100坪の店内で)を達成した。これは、快挙だと言われた。

平均年令24才の職場にとって、スポーツ的・ゲーム的・お遊び的な仕事の仕方が必要だった。そうしたものをどんどん考案してくれたS君がムードメーカーであり、リードオフマンだったのだ。

あなたの会社の経営陣にそうしたキャラクターの持ち主がいればベストだが、若手の実力者の中にそうした人物がいれば、その人にまかせても良い。とにかくムードを明るくする、楽しくする才能は組織にとって貴重なのだ。

東京五反田にシグマクレストというソフト開発会社がある。

同社の人材開発事業部の新間さんは、あえて採用段階から学生に、どの程度、遊び心があるかテストするため、型破りの採用方法をとり入れている。

それは、「アミューズメント採用」というもので、先輩社員と学生がボーリングやカラオケ(これからはビリヤードやダーツなども)でガチンコ勝負を行い、勝てば一時面接通過というシステムをとっているのだ。
もし負けたとしても、振る舞いなどが社風にあうと思えた学生も通過させるそうだ。

盛り上がったムードの中、投球の合間や歌の合間に、聞きにくいことも質問してくるし、お互いの素顔を見せることができる。
先輩社員にとっては福利厚生にもなっているし、「アミューズメント面接」の結果、今まで獲れなかったような人材まで獲れるようになったという。

担当者は語る。

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思った以上の成果がありました。ボウリングでは、普通の採用面接では聞かなかったような砕けたお話まで若手社員がしておりました。カラオケも選曲や周りへの心遣いでその人らしさがとてもよく伝わってきました。今後も面白い採用活動を実施してゆく予定です。
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「土の香りのソフト屋さん」シグマクレスト
http://www.sigma-crest.com/

ムードメーカー(お祭り男)を育てよう。もしいなかったら、その可能性がある人材を採用しよう。