「採用活動は合コンのようなもの。気に入った相手を早く見つけて、相思相愛の関係を作っていくスピードを競い合うわけですから。他社とは人材の争奪戦になるわけで、企業間競争はすでに採用の段階から始まっているのです」と持論を展開するA社長。
私はA社長の考えを、少々違和感を感じながら聞いていた。
学生にとってみれば、就職活動とは内定を得ることがゴールではないはずだ。就活を通して学ぶことがたくさんあると思うのだ。
それと同様に、企業にとってみても、内定者を早く確保することだけが採用活動の目的なのだろうか?と。
学生にとっては、自分自身と社会との関わりを真剣に考える最初の経験であり、人生で初めてお客の側から売り手の側へ回ることを考えるときでもある。おそらく180度の発想転換が必要とされるほどの、貴重な学習期間なのだ。
当然、採用する側としては優秀な学生を早く確保したいし、優秀そうに思えない学生に対しては早くから不採用を告知したいもの。
だが、4月や5月のうちから不採用通知を出したり、その逆に、「内定がうち(当社)から出たら、あなたは他社を断ってくれますか?」と学生に迫るのもいかがなものか。
採用する側のそうした気持ちは理解できるが、少々気の毒ではなかろうか。少なくとも6月いっぱいまでは、学生を自由に泳がせてあげる度量が必要だと思う。
名古屋で自動車部品製造を営むK社長は、「学生は採用活動を通して成長する」と語る。
3月頃に初めて出会ったときの第一印象では「C」程度の評価だった学生が、その後、接触のたびに印象が変わっていき最終的には相思相愛になることが過去何度でもあったという。
そういう変化率の大きい学生は、入社した後も職場に良い影響を及ぼしてくれるそうだ。
学生は、就職活動を通して成長するのものだ。それを私は「就活成長」と名付けた。
3月、4月の段階では就職したい業種も職種も地域もすべて未定だという学生が少なくない。要するに何も決めていないのだ。
諸外国の学生と比べると、何たる奥手と思える。「もっと真剣に自分の未来のことを考えろよ」と言いたくなるが、学生として純粋に学び、遊んできたわけであって、社会人になっている自分を考えながら学校に通っていたのではないというのが学生の本音だろう。
先のK社長に、「就職活動を通して成長する人材とは、どういう人か?」と聞いてみた。すると面白い答えが返ってきた。
能力的にはAクラスの人材でも、他社と当社とを迷っている学生は就職活動において伸びていない。能力はBクラスでも、当社で働くことを熱望してくれている学生は、会うたびに印象が良くなる。そうした人を取るべし、という。
そのK社長をはじめ、何人かの採用経験豊富な社長が共著で書いた本がある。
『就活の決定版!社長面接攻略の鉄則マル秘完全マニュアル』(旭屋出版)という。
愛知中小企業家同友会共同求人委員会による発行で、学生に配布するために先月完成した本だが、経営者が読んで参考になる内容だ。
ネット書店では入手できないし、書店販売もまだ名古屋でしか行われていないが、いかが。
『就活の決定版!社長面接攻略の鉄則マル秘完全マニュアル』