未分類

決算速報

計画と実績の誤差を把握し、ギャップを埋めるための対策を練るためには、正しい実態把握が必要となる。それも、現実をありのままに反映させた数字がもっとも望ましい。最適なものは、月次の損益計算書と貸借対照表、キャッシュフロー報告書の3点セットがあれば申し分ない。

もしくは、それに変わる何かのオリジナル帳票であっても構わない。

過日のある社長。

「武沢さん、ソフトバンクでは毎月1日に前月の決算書が出来ていると聞いたが、あれ本当ですか。上場企業では決算発表までに早くても一ヶ月はかかるが、本当に一日で決算が出来てしまうなんて信じられないんだが。」

「ちなみに社長の会社では何日かかっていますか?」

「うち?税理士さんから月次報告をもらうのは早くて一ヶ月はかかりますよ。遠い昔話を聞かされているようなデータだからチラッと見てそれで終わりですけど。」

中小企業ではよくある話だ。一ヶ月も前の決算書を今もらっても、大して役に立たないのではないだろうか。計画と実績の誤差を把握し、有効な経営対策を練るためには、少なくとも一週間以内に月次決算書が出来ていなければならない。

ただし、混同してはいけない。決算書を作る目的は二つあるのだ。

一つは、正しい税務申告を行うためであり、世間に公表するためである。あとの一つは正しい現実把握をするため。上場企業では、前者の目的を果たすために一ヶ月以上の期間を要する。

中小企業で大切なのは、前者だけでなく後者の目的、つまり正しい現実把握をするために決算書を完成させなければならない。それは“業績速報”として使うもので、精度は必ずしも100%である必要はない。最新の損益と貸借、それにキャッシュフローがどのようになっているかを理解するためには、精度90%であっても構わないので一日でも早く速報が出ることが望ましい。

月初の経営会議などに参加すると、必ず売上高の実績は出ている。
なぜなら営業部が日常的にそれを管理しているからだ。

だが、売掛の回収がどうであったか、在庫の増加はどうであったか、仕掛かりの回転率は鈍っていないか、財務からみた安全性や収益性はどう変化しているかなどを議論する企業は少ない。

資金繰りに余裕があれば社長の機嫌がよく、苦しくなると社長の顔色が冴えない。資金繰り次第で会議のムードがガラッと変わるような経営会議はそろそろ終わりにしよう。経営会議のクォリティが高いから役員が育つのか、それともその逆かはわからないが、社長が決算書に強い企業では、経営会議の質が高いのだ。

最近では日経ビジネス文庫などから出ている社長向けの数字の本が売れている。相当分かりやすく、人気があるようだ。こうした本を一冊だけ精読されれば、必ず来月からは決算書が早く欲しくなるはずだ。ちなみに今日は6日。今日の時点で先月の決算書が出ている会社は頼もしい。